平成15年3月定例議会報告  (第16号)

 

 選挙の影響もあり、議会報告が遅くなってしまったことをお詫びいたします。

4月末の町議会選挙で無投票当選いたしました。支持者の皆さんの暖かく力強いご支援のおかげで、準備から後片付けに至るまで大変手間のかかることにもかかわらず何とか乗り切ることができました。

当選自体は本当に喜ばしいことですが、反面、無投票だったことは二つの意味で非常に残念です。ひとつは、不遜な言い方かもしれませんが、果たして何票いただけたか4年間の評価を確認したかったことです。もうひとつは、4年にたった一度の住民が政治に参加する機会が失われたことです。我々も胸を張って「選挙で選ばれた住民代表」とは名乗れません。選挙を手伝ってくださる皆さんに仕事を休んで頂かずに済んでホッとした反面、何か物足りないものを感じるのは候補者だけではないと思います。

気持ちを新たにがんばりますので、今後ともよろしくご指導をお願い申し上げます。

 それでは、3月定例議会の報告を致します。本会議は3月5(水),6(木),10(月),11(火),19(水)と6回開かれました。このうち、5・6は主に一般質問、6〜11は議案の説明質疑、19は討論・採決でした。

 

 

一般質問

 

@理科教育について

 

子供たちは、理科教育を通じて自然科学の基礎的な事実・概念・法則を学ぶとともに自然科学の方法を学び、世界観を形成します。理科教育は、資源のないわが国が将来にわたって繁栄するのに不可欠であり、国語・算数に次いで学校教育の根幹を成すと考えられます。

そんな中、「ゆとり教育」で中学のカリキュラムが高校へ先送りされています。たとえば、「イオン」や「遺伝の法則」「進化」などは、中学校では扱わないことになりました。しかし、「マイナスイオン」「DNA」などの言葉がテレビや新聞、雑誌にあふれています。これらの言葉について正しい理解がされているのでしょうか。中学で習う「中和」「電池」「電気分解」の原理的な理解には「イオン」の概念が不可欠です。にもかかわらず、教科書では「電池は化学エネルギーを電気エネルギーに変えている」と抽象的な説明にとどまっています。「遺伝の法則」にしても、メンデルがいかにして法則を導き出したかが真骨頂なのに、カリキュラムから科学の方法論が抜け落ちています。

教科書に記述がないのは致し方ないとしても、授業でどう説明されているのでしょうか?副読本などはあるのでしょうか?子供たちに如何に興味を持たせるか、教師の力量が問われるところです。田中耕一さんの例を見るまでもなく、理科好きは小中学校で育まれると思います。

理科や工作への興味を喚起するために、子ども発明工夫コンテストを開いてはどうでしょうか? 少年少女発明クラブを持っているところもあります。刈谷市では財団が運営していて1,700人の子どもたちが参加しています。東浦からでも参加可能だそうです。大府市では市が運営していて、メンバーは80人。東浦だって指導できる先生や企業の技術者はいるはずです。

教育長の答弁では、「イオンや遺伝の法則は中学校では取り上げないが、発展的な学習や教師の工夫でカバーしたい。」「コンテストやクラブは今後の課題としたい。」とのこと。

質問したついでに、「我々が小学生のころ親しんでいた『科学と学習』は学校で購読できなくなって残念だ。」「今の理科室は片付き過ぎている。おどろおどろしい骸骨や訳のわからない標本が好奇心をそそるワンダーランドであって欲しい。」「年表や元素周期律表は貼っておくだけでも効果がある。詰め込みを恐れるあまり、覚える工夫がおろそかになっていないか。」など、注文を付けておきました。

 

 

A人事評価と職員のスキルアップ

 

役所と民間は違うと言うけれど、役所だって立派なサービス業。世の中はめまぐるしく変わっています。新しいサービスの仕方を考える力も必要です。どうやって能力・成果を的確に把握して、それを昇給・昇格に反映させ、人材育成に結び付けていくのか。職員自身が自分の知識・技能を高めていく必要もあります。

1)各人が業務目標を設定して仕事の達成度を評価する“目標管理”をしているでしょうか? 特に、行政評価が進展すれば目標管理とリンクせざるを得ないと思います。そしてアウトカム(仕事の成果)が重視されます。たとえば、ボランティア養成講座を開催する場合、滞りなく開催すれば終わりではなく、受講者がどれだけいたか、満足度はどうか、もっと言えば、受講後にどれだけの人がボランティアに参加したかが問われてしかるべきです。

2)人事評価には客観性、公平性、納得性が求められます。従来の上司のみに加え、同僚、部下、他部門からの「全方位評価を」採用してはどうでしょうか?

3)女性や若手の登用はどうなっているのでしょうか? 女性も男性も働く能力は同じ、体の機能が違うだけです。年をとると知恵はついて来ますが、体力・知力は30歳位がピークだと私は思います。人は、自分の責任で仕事をしなければならないところに追い込まれると、ちゃんと仕事をするものです。しかし、残念なことに日本では、年功序列がはびこっています。行政の仕事は、結果が出るまで10年20年かかることもあります。結果をかぶる世代が責任あるポジションに着くべきです。戦後日本に勢いがあったのは、公職追放のおかげで若手が要職に就かざるを得なかったからではないでしょうか?

4)自主的に勉強する文化も大切です。職業人として自分の価値を高める必要があります。現状ではどんな勉強会等が行われているのでしょうか?

答弁では、「目標管理はしていない。」「直属の係長・課長・部長のタテの関係でしか評価していない。」「人事評価については、平成15年中に能力・業績を重視する国の新人事制度がまとまるので、それに準じていきたい。」「女性・若手の登用は、人材・能力に合わせて行う。」「先進地視察、通信教育、専門研修を今後も奨励していく。」とのこと。

しかし、国に追随ではさびしい。町独自の問題意識はないのでしょうか。

 

 

B飛山池周辺の自然公園構想について

 

以前質問した飛山池周辺の自然公園構想について、その後の進展を質問しました。それから、黒鳥地区(県道東浦名古屋線の東側)の山林まで公園域を広げ、まとまった里山として保存する考えを尋ねました。

答弁では、「15年度に“緑の基本計画”の見直しをする際に、緑地の保全に配慮しつつ何らかの位置付けをしたい。借地するなど地主への対応はその後。」「黒鳥地区については、宅地開発計画の行方を見守りたい。」とのこと。

オニバスの自生地があり、里山保全、景観の上でも貴重なところです。住宅地に近接しており憩いの場ともなり得る立地です。緑の基本計画のなかで保全への配慮を求めました。

黒鳥地区の宅地開発計画は事実上頓挫しています。この一帯には、桐林、桜の巨木、刈谷市街が一望できる高台などもあって、町内にまだこんなところがあったのかと感動します。何とかしてこの環境を残していきたいものです。役場の皆さんも探検してみてはいかがでしょうか。きっと何か発見があるはずです。

 

 

C商工行政について

 

近年、イオンショッピングセンターをはじめとしてたくさんの大型店が出店しました。これを、どう捉えているか。今後、地元商店を含めどのような商工行政を展開するのか、まちおこし施策に絡めて質問しました。

答弁では、「今まで買い物は、大半が町外へ流出していたが、イオン開店後は町外から1日25,000〜50,000人が来るようになった。これをチャンスと捕らえ、地域に根付いた魅力ある商業活動を商工会で研究中。大型店影響調査も実施中。」とのこと。

以前、ある知人が「皆が能力を発揮できる状態を景気が良いと定義する。」と言ったことを覚えています。利益だけでなく、みんなが協力してそれぞれの分野で出来ることをやっていく。この発想は、地域おこしとつながります。町内でも、於大かるた、能と狂言の夕べ、於大まつりを手作り(鎧兜を自作)でやろうなど、意欲的な活動が生まれています。於大公園で夕暮れコンサートの企画もありますが、ともすれば規則を盾にとって行政が抵抗勢力になっているように感じることがあります。住民と行政が力を合わせてまちおこしを進めることが大切です。

町長も、「大賛成だ。於大まつりも行政が音頭をとって始めたが、民間主導にしていかないと、地域の文化として根付かない。」と答弁しました。

 

 

議案審議

 

[条例案・その他]

@公文書公開条例の一部改正(国の法律改正に伴い独立行政法人に関する規定を追加)

A手数料条例の一部改正(介護手数料の額、徴収時期等を変更)

B町営グラウンドの設置及び管理に関する条例の一部改正(南部グラウンドの追加)

C勤労者体育センター条例の廃止(国の外郭団体から譲り受け、町有施設として利用)

D児童館条例の一部改正(緒川JA跡に児童クラブを増設)

E子育て支援センター条例の制定(緒川JA跡に子育て支援センターを設置)

F生きがい活動支援通所条例の制定(緒川JA跡に高齢者ふれあい施設を設置)

G汚水処理施設の設置及び管理に関する条例の廃止(石浜汚水処理場を廃止、下水道に接続)

H国民健康保険税条例の一部改正(介護納付金課税額の変更、平均で15%増の見込み)

I放置自動車の発生の防止及び適正な処理に関する条例の制定(公共用地に放置された自動車の処分を規定)

J特別職の職員で非常勤のものの報酬及び費用弁償に関する条例の一部改正(放置自動車廃棄物判定委員の設置)

K旅館等の建築の規制に関する条例の一部改正(旅館等建築審査会の委員構成を変更)

L都市下水路条例の一部改正(下水道整備地区の汚水幹線を公共下水道の雨水路に移管)

M消防団条例の一部改正(協力団員を消防団員に統合、報奨金の増額)

N非常勤消防団及び消防協力団員に係る退職報奨金の支給に関する条例の一部改正(協力団員を消防団員に統合)

O消防団員等賞じゅつ金及び殉職者特別賞じゅつ金支給条例の一部改正(協力団員を消防団員に統合)

P土地区画整理事業に伴う字の区域の変更(飯喰場の一部を中町に)

Q森岡踏切拡幅工事委託に伴う協定の締結(1億792万円,JR東海に工事委託)

R防災行政無線設置工事請負契約の変更(2,624万円の減額,カナデン)

S損害賠償の額の決定及び和解(町の霊柩車が交通事故、被害者に331万円賠償)

 

D〜Fは、旧緒川JAの建物を改装して、児童クラブと子育て支援センター、高齢者ふれあい施設「ひだまり」として利用するためのものです。子育て支援センターでは、6人のスタッフが子育てに関する相談、子育てサークルの育成、そして、子供の世話を依頼したい人と援助できる人とを仲介するなどの活動をします。

公共用地に自動車を放置されてもお手上げでしたが、Iにより、撤去命令を出すか廃棄物認定して処分する手続きを明確化しました。

Rは、防災無線の設置工事で、一部翌年度に回したりアンテナを付けずに済んだりしたため、2億2,890万円のところ2億266万円に減額となりました。しかし、設置にあたっては、誰の家につけるのか、どんな内容の放送をするのか、設置家庭にはどんな役割が求められるのか説明が十分ではありません。1台5万円の受信機を2,800戸に設置する大掛かりな計画の割には、事前の運用準備が手薄であることを指摘しておきました。

Hは、共産党の反対があったものの、すべての議案が可決されました。

 

 

[予算案]

@平成14年度補正予算

A平成15年度一般会計予算

B平成15年度特別会計予算

C平成15年度水道事業会計予算

 

平成15年度(平成15年4月〜平成16年3月)予算を決定しました。一般会計は118億円、5つの特別会計(国民健康保険事業、土地取得、老人保健、下水道事業、緒川駅東土地区画整理事業)は合わせて90億円、水道事業会計は原則独立採算の企業会計になっていて収入9億9,600万円と支出11億7,300万円を見込んでいます。

すべての予算案は、賛成多数で可決されました。

 

 

[意見書]

@イラク問題の平和的解決を求める意見書

A健康保険の医療費自己負担増凍結を求める意見書

 

@を全会一致で可決しましたが、会期の途中でイラク戦争が始まってしまいました。

Aは、共産党以外の反対で否決されました。

 

 

名古屋大学シンポジウム

 

平成15年3月22日に名古屋大学で行われたシンポジウムでパネリストを務めました。http://www.urban.env.nagoya-u.ac.jp/~estsympo/ 参照)

 議会の総合交通体系調査特別委員会で町運行バスのあり方を議論した際にお世話になった名古屋大学の加藤博和助教授のお誘いで、パネルディスカッションに参加させていただきました。

 本シンポジウムは3月23〜25日に開かれた「交通と環境に関する名古屋国際会議」のプレイベントとして、名古屋大学大学院環境学研究科の主催で「持続可能な都市・地域交通システムの再構築」と題して開催されたものです。

 パネルディスカッションは、”環境にやさしい”持続可能な交通システムを如何に普及させていくかをテーマに、大学や研究機関の研究者、自治体関係者、バス事業者が参加して行われました。まず、大学や研究機関の研究者から地球レベルでの温室効果ガスの排出状況や、欧米・アジアでの取り組みなどの紹介があり、それを踏まえ、自治体やバス事業者の取り組みの状況、そしてこれからどんなことができるかを討論しました。

 私は、自治体関係者あるいは市民の立場で、東浦町を例に取り、環境に配慮した交通施策の現状と今後の展開について、私見を交え発表しました。

 持続可能な交通システムを普及させるには、地球環境に対する住民意識の醸成が不可欠となります。そういった意味で、グローバルな問題をローカルな視点に結び付けようと試みたのが、今回のプレシンポの意図だったのだと思います。

私の発表の要旨と質疑は以下の通りです。

 

 

パネルディスカッション要旨

2003年3月22日  東浦町議会議員 神谷明彦

 

T.今まで自治体が「交通計画」に真剣に取り組んでこなかった背景

 @東浦町総合計画にも「交通計画」というククリはない。

「道路整備」「鉄道機関(への要望)」「交通安全」等、独立していて「交通体系」の発想がない。

 A市町村行政は、国・県の後追い。

国が権限を渡さなかったし、市町村には独自の政策を創造する気概がない。

 B小さな自治体単独の問題に留まらない。

10分走れば隣のまち

 C大都市のような複雑な交通システムを持っていない。

交通の面から環境に関与できる余地は限られている。

 

U.東浦町における環境に配慮した交通施策

 @町運行バスの実績(特に環境を意識したわけではないが、集客施設を中心にまずまずの利用)

 Aパーク&ライドの現状(現在、利用者は3名。駅までの距離も問題か?)

 Bその他の取り組み(駐輪場の整備、公用車をハイブリッドカーに、役場のノーマイカーデー)

 

V.今後の展開(私見)

 @公共交通の快適性向上のための地道な取り組み(バス停などの環境整備、相互の接続、利用者へのPR)

 A他の自治体との連携(相互乗り入れ・共同運行)

 B空港へのアクセスとの組み合わせ(パーク&高速バスライド?)

 C警察との情報交換(交通管制を警察にお任せにしない)

    信号は止めどもなく増えつづける。

    踏み切りの一旦停止をやめたら?

 

 

 

※町運行バス「う・ら・ら」を実現するにあたって留意した点

 

たくさんのお客さんに乗ってもらうにはどうすればよいか?

 @「公共施設」を「巡回」はダメ

 A「我田引バス」をしない

 Bバス停間隔を250〜300mに短縮

 C始発から終点まで長くても1時間以内

 D2時間ヘッドのわかりやすいダイヤ

 EJRや知多バスとの接続を考慮

 F遠距離通学の小学生に配慮

 G停留所の呼称は親しみやすい固有名詞(×「ショッピングセンター」→○「イオン東浦」)

 H愛称「う・ら・ら」を公募で選考(宣伝効果もねらい)

そして、幸運にも、イオン東浦ショッピングセンターやげんきの郷の開業と「う・ら・ら」の運行開始の時期が重なった。

 

 ⇒県内のコミュニティーバスの中でトップクラスの利用者を誇っている。

 

「う・ら・ら」について詳しくは、東浦町のホームページ http://www.nhk-chubu-brains.co.jp/aichi/higashiura/bus/bus.html

               加藤博和・ホームページ  http://orient.genv.nagoya-u.ac.jp/kato/bus/res/res4/res4plus.htm

               神谷明彦のホームページ http://homepage3.nifty.com/kamiya-a/busrepcolection.html

 

 

主な質問と回答

 

Q:事前のアンケート調査は行ったか?

A:東浦町が日本福祉大学に委託して住民2,000人に対して、既存のバスの利用状況や、バスに対する住民の意識調査・ニーズ調査を行った。アンケートは設問に技術を要する。「バスがあった方が良いですか。」はナンセンス。また、アンケートで潜在ニーズをつかむのは難しく、結果を鵜呑みにすべきではないと思う。

 

Q:コミュニティーバスは福祉施策か?

A:確かに福祉には違いないが、福祉と言い切ってしまうべきではないと思う。「福祉」の名のもとに、住民に利用されないにもかかわらず、改善の努力を怠る危険がある。特定の人のみではなく、幅広い層に支持され、かつ、一見さんにも利用しやすいものが本物と言える。

 

 

 

 

 これはあくまでも私個人の目から見た議会活動報告です。意見・考え方を異にする方も居られるのは当然のことと思います。ご意見、ご批判、ご要望、アドバイス等何なりとお気軽にお寄せください。

 6月定例議会本会議の開催予定は6月6(金),7(土),9(月),18(水)の4回で、いずれも朝9時30分からです。7〜9は一般質問、9の後半は議案の説明・質疑、18は討論・採決です。改選後初めての定例議会です。6月7日には、年に一度の土曜議会も開催されます。いつになく傍聴者で賑わうものと思われます。

 

平成15年5月20日

 

神谷明彦

E-mail kamiya-a@mbk.nifty.com

 

 

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