平成15年3月22日に名古屋大学で行われたシンポジウムでパネリストを務めました。
http://www.urban.env.nagoya-u.ac.jp/~estsympo/ 参照)

 議会の総合交通体系調査特別委員会で町運行バスのあり方を議論した際にお世話になった名古屋大学の加藤博和助教授のおさそいで、パネルディスカッションに参加させていただきました。
 本シンポジウムは3月23〜25日に開かれた「交通と環境に関する名古屋国際会議」のプレイベントとして、名古屋大学大学院環境学研究科の主催で「持続可能な都市・地域交通システムの再構築」と題して開催されたものです。

 パネルディスカッションは、”環境にやさしい”持続可能な交通システムを如何に普及させていくかをテーマに、大学や研究機関の研究者、自治体関係者、バス事業者が参加して行われました。まず、大学や研究機関の研究者から地球レベルでの温室効果ガスの排出状況や、欧米・アジアでの取り組みなどの紹介があり、それを踏まえ、自治体やバス事業者の取り組みの状況、そしてこれからどんなことができるかを討論しました。
 私は、自治体関係者あるいは市民の立場で、東浦町を例に取り、環境に配慮した交通施策の現状と今後の展開について、私見を交え発表しました。
 持続可能な交通システムを普及させるには、地球環境に対する住民意識の醸成が不可欠となります。そういった意味で、グローバルな問題をローカルな視点に結びつけようと試みたのが、今回のプレシンポの意図だったのだと思います。
 私の発表の要旨と質疑は以下の通りです。



                       パネルディスカッション要旨
                                    2003年3月22日  東浦町議会議員 神谷明彦

T.今まで「交通計画」に真剣に取り組んでこなかった背景
 @東浦町総合計画にも「交通計画」というククリはない。
    「道路整備」「鉄道機関(への要望)」「交通安全」等、独立していて「交通体系」の発想がない。
 A市町村行政は、国・県の後追い。
    国が権限を渡さなかったし、市町村には独自の政策を創造する気概がない。
 B小さな自治体単独の問題に留まらない。
    10分走れば隣のまち
 C大都市のような複雑な交通システムを持っていない。
    交通の面から環境に関与できる余地は限られている。

U.東浦町における Environmentally Sustainable Transport に関わる取り組み
 @町運行バスの実績(特に環境を意識したわけではないが、集客施設を中心にまずまずの利用)※
 Aパーク&ライドの現状(現在、利用者は3名。駅までの距離も問題か?)
 Bその他の取り組み(駐輪場の整備、公用車をハイブリッドカーに、役場のノーマイカーデー)

V.今後の展開(私見)
 @公共交通の快適性向上のための地道な取り組み(バス停などの環境整備、相互の接続、利用者へのPR)
 A他の自治体との連携(相互乗り入れ・共同運行)
 B空港へのアクセスとの組み合わせ(パーク&高速バスライド?)
 C警察との情報交換(交通管制を警察にお任せにしない)
    信号は止めどもなく増えつづける。
    踏み切りの一旦停止をやめたら?



町運行バス「う・ら・ら」を実現するにあたって留意した点

 たくさんのお客さんに乗ってもらうにはどうすればよいか?
  @「公共施設」を「巡回」はダメ
  A「我田引バス」をしない
  Bバス停間隔を250〜300mに短縮
  C始発から終点まで長くても1時間以内
  D2時間ヘッドのわかりやすいダイヤ
  EJRや知多バスとの接続を考慮
  F遠距離通学の小学生に配慮
  G停留所の呼称は親しみやすい固有名詞(×「ショッピングセンター」→○「イオン東浦」)
  H愛称「う・ら・ら」を公募で選考(宣伝効果もねらい)
 そして、幸運にも、
 イオン東浦ショッピングセンターやげんきの郷の開業と「う・ら・ら」の運行開始の時期が重なった。

 ⇒県内のコミュニティーバスの中でトップクラスの利用者を誇っている。


「う・ら・ら」について詳しくは、東浦町のホームページ http://www.nhk-chubu-brains.co.jp/aichi/higashiura/bus/bus.html
                    加藤博和・ホームページ  http://orient.genv.nagoya-u.ac.jp/kato/bus/res/res4/res4plus.htm
               神谷明彦のホームページ http://homepage3.nifty.com/kamiya-a/busrepcolection.html



主な質問と回答

Q:事前のアンケート調査は行ったか?
A:東浦町が日本福祉大学に委託して住民2,000人に対して、
  既存のバスの利用状況や、バスに対する住民の意識調査・ニーズ調査を行った。
  アンケートは設問に技術を要する。「バスがあった方が良いですか。」はナンセンス。
  また、アンケートで潜在ニーズをつかむのは難しく、結果を鵜呑みにすべきではないと思う。

Q:コミュニティーバスは福祉施策か?
A:確かに福祉には違いないが、福祉と言い切ってしまうべきではないと思う。
  「福祉」の名のもとに、住民に利用されないにもかかわらず、改善の努力を怠る危険がある。
  特定の人のみではなく、幅広い層に支持され、かつ、一見さんにも利用しやすいものが本物と言える。



 パネルディスカッション参加者

  <モデレーター>
  林 良嗣(名古屋大学大学院環境学研究科都市環境学専攻教授)

  <パネリスト>
  安部 誠治(関西大学商学部教授)
  伊豆原浩二(豊田都市交通研究所研究部長)
  片山 健一(名古屋市総務局企画部主幹<総合交通体系担当>)
  上岡 直見(環境自治体会議環境政策研究所主任研究員)
  神谷 明彦(愛知県東浦町議会議員)
  清水  武(北恵那交通社長)



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