神谷明彦の6月定例議会報告 (第45号)
雨が降るとジメジメ、晴れるとズシリと暑い毎日が続いています。暑くなり始めは身体が慣れるまで辛いですね。でも、うちはエアコンなしでがんばります。さて、今年の夏はどんな夏になるでしょうか?
6月定例議会本会議は6月3(木),4(金),7(月),8(火),17(木)の5回開かれました。このうち、3は議案の上程と説明、4・7は一般質問、8は議案の質疑、17は討論・採決でした。
@拙速な市制移行に対応できるか? 住民投票は?
行政は、市制施行に熱心ですが、住民の中には拙速な市政移行に疑問を感じている人もいます。現状で市政施行に伴う権限移譲に十分対応できるのでしょうか。また、住民投票等で住民の意向を問うべきではないでしょうか。
<市と町村の権限格差は広がるか?これからどんな権限が移譲されるのか?>
町長によれば、「これから地方分権が進展すると、市には権限が移譲されるが、町村には移譲されない。自立した行政運営をするには市にならなければならない。」と言います。
地方分権改革推進委員会が2008年の5月(前政権時)に発表した第一次勧告によれば、(たとえば、開発行為の許可、2ha以下の農地転用の許可など)359の事務を都道府県から市町村へ権限移譲すべきだと言っています。しかし中央省庁の抵抗もあり、このうちどれだけの権限が移譲されるかわからないし、市と町村がどれだけ区別されるかもわかりません。これに対して町長は、「目標と意識改革が必要。そういう機会を作らねば、待っているだけではどうにもならない。このまま行くと市と町村については格差が付くだろう。付いてからでは遅い。」と答弁しました。
しかし、いまだに議会答弁で「国や他市町の動向を見ながらやっていく」という決まり文句が出るような状態で、本当に自立できるのでしょうか?
<権限委譲ではっきりしているのは福祉事務所の設置>
従来からはっきりしている権限委譲として、福祉事務所の設置があります。生活保護の実施などは、人対人の大変な仕事と聞きます。それを県から“東浦市”が引き継ぐことになります。熱意のみでなく専門性が要求されると思いますが、遅くて3年、早いと1年で職場を変わっていくような今の体制で職務をまっとう出来るでしょうか?
これに対して、「県派遣職員の受け入れや町職員の福祉事務所への派遣など計画的な人事育成をしており、十分対応可能。やっていかねばならない。」との答弁でした。
<住民の心配は人件費の負担増>
少なからぬ住民の皆さんの心配は、「市になっても、行政サービスの質は上がらない。そのうち、一般職・特別職の給料・報酬だけ、他市と横並びで増えるのでは。」「住民負担だけ増えて、返ってくるサービスは良くならなかったらどうしよう。」ということだと思います。それに答える必要があります。
これに対して、「結果として住民サービスが向上して、実感のもとに人件費増を議論いただくのは結構だが、自動的に人件費が横並びに上がる懸念はない。」との答弁でした。
<納得のいく説明したうえで、住民の判断を受けるべきでは>
平成21年3月定例議会では、住民投票はしないが、住民意識調査(市制移行のアンケート)はするとの答弁でしたが、今回の答弁では住民意識調査も怪しくなりました。行政によれば、まだ10月の国勢調査で人口要件をクリアできるかわからない。住民意識調査については現在検討中とのことでした。
ちなみに、昨年、中学生を対象に行ったアンケート調査(539人を対象、回収率9割)では、市になりたい24%、なりたくない17%、どちらでも良い59%。大人に対しても一方的な説明だけでなく、意向を確認すべきではないでしょうか。
A審議会、協議会、委員会などの諮問機関の活性化を
短期間で知識・興味を持てないままアテ職でころころメンバーが代わっていったり、ほとんど発言する機会のない人がいたり、一人の人がいくつもの諮問機関を掛け持ちしなくてはならなかったり、さまざまな問題があると思います。議論が活性化しないと、せっかく諮問機関を設置しても、単なる追認機関になりかねません。一般質問を通じて以下の提言をしました。
<まだ少ない住民公募>
住民公募が少しずつ増えてきてはいますが、興味や意欲のある住民をもっと公募で大幅に増やすべきです。平成17年当時(以前質問したとき)、リストアップされている諮問機関40数個のうち公募を導入しているのは2つだけでした。
その後、公募を取り入れたのは、都市計画マスタープラン策定委員会(公募2人/委員15人)、障害者いきいきライフプラン策定委員会(公募1人/14人)、まちづくり計画委員会(公募10人/57人)の3つ。公募の入っている会議は1割あるかどうか。人数たるや延べ何百人いるうちの人握りです。5万人が住んでいるまちには専門的な見識を持っている方はたくさんいるだろうし、興味・関心を持っている方もたくさんいるはずです。その住民力を上手に使うべきです。
行政は、「住民意見の反映や協働推進のためにも、組織の目的や規模に応じて、公募委員の参加を進めて行く。」しかし「一概に増やせばよいとは思わない。」との答弁でした。
<団体内で役割分担を>
各種団体の長や連絡所長(区長)にアテ職が集中しているケースがありますが、一人に負担をかけるよりも、団体内で分野に応じて担当者に役割分担して、長の負担を軽減することはできないでしょうか。また、諮問機関の任期途中で、団体の役員(多くは1年ローテーション)が入れ替わる場合は、前任者に諮問機関の任期を全うしていただいたほうが会議の継続性という点では望ましいと思います。
これに対して、行政は「各種団体の長に集中しがちなのは事実。団体内部で分担することなどは特に否定しない。」との立場ですが、否定しないだけでなく「団体の中で興味、見識のある方を選んでください」というお願いの一言があって良いと思います。
<議論の活性化のため、事前の資料提供や勉強会を>
議論の活性化のために、参加者の予備知識を充実させるための勉強会などは考えられないでしょうか。会議資料や議題の1週間前配布は徹底して欲しいところです。出て行っていきなり「意見はありませんか」と言われてぼやいている方はたくさんいます。
これに対して、「予備知識としての事前学習も必要だが、委員の負担も大きくなる。それぞれの組織で事前に資料を配布するなど配慮したい。事前に委員さん自身が考えられるような努力はしていきたい。」との答弁でした。
<ワークショップやプラーヌンクスツェレも>
計画などを策定するのに“会議で承認”と言う形をとるだけでなく、ワークショップ形式を取り入れて参加者が意見交換しながら進める例も増えつつあります。「プラーヌンクスツェレ」と呼ばれる無作為抽出されたメンバーで課題に取り組むドイツの住民参加の手法も、今後の参考にしてはどうかと思います。
Bパーセント条例の創設を
住民税の1%の使途を住民が決められる制度など、お金の使い道の面で、住民の行政への関心や参加を募る制度は考えられないでしょうか。
ただし、パーセント条例と一口にいっても多様な形があります。一宮市では、市民が支援したい市民活動団体に個人市民税の1%相当額を補助することができます。東浦の場合は、選ぶほどNPO等の市民活動団体が育っていないので、行政の事業を選んでもらう、あるいは、コミュニティや各種団体の事業も含めて、支援先を選んでもらう方法が考えられます。自分で払った税金の中から自分で選択できる、税の使途への住民参加です。
行政は、「マッチングギフト方式(市民からの寄付と同額を行政も積み立てる)やふるさと納税制度(行政への寄付の代わりに税控除)も同様の効果がある。まずは、受け入れ先の団体が育って来るとありがたい。現在の制度を使って地域の市民活動団体を担う人材の育成をしていきたい。」との答弁でした。
C(仮称)自然環境学習の森のオープンに向けて
これから、森のオープンに向けて条例制定していくものと思われますが、保全とは何か、どんな里山を目指すのか、理念的なことやあるべき姿について、詰めておかないと、保全の方針が定まりません。同じ生物でも、入れてよい生物、入れてはいけない生物は、人によってかなり見解が分かれると思います。すでに犬の散歩をしている方もいます。早くきちんとした理念を作って条例に盛り込み、それをふまえて利活用のルールをつくることが必要です。
「平成23年3月までに条例と利活用のルールを定める。住民が里山の自然に触れ、人と自然との関係を学ぶ場として、“保全・育成の会”の意見をもらいながら設置の趣旨および利用の制限を定めていく。」との答弁でした。
[条例・補正予算・その他]
@税条例を一部改正する専決処分の承認(地方税法改正に伴い、65歳未満の公的年金に係る個人住民税を給与から天引きできることとする)
A都市計画税条例を一部改正する専決処分の承認(地方税法改正に伴う語句の変更)
B国民健康保険税条例を一部改正する専決処分の承認(地方税法改正に伴い、雇用保険受給資格者の課税の特例、後期高齢者の被扶養者への課税の特例)
C平成21年度一般会計補正予算(第8号)の専決処分の承認(退職手当の支払い)
D職員の育児休業等に関する条例の一部改正(地方公務員の育児休業等に関する法律の改正に伴い、育児休業の条件を緩和)
E職員の勤務時間、休暇等に関する条例の一部改正(地方公務員の育児休業等に関する法律の改正に伴い、早出遅出勤務の条件を緩和、時間外勤務を制限)
F職員の退職手当に関する条例の一部改正(雇用保険法改正に伴う語句の変更)
G企業職員の給与の種類及び基準に関する条例の一部改正(雇用保険法改正に伴う語句の変更)
H税条例の一部改正(地方税法改正に伴い、タバコ税引き上げ、上場株式譲渡に係る特例など)
I平成22年度一般会計補正予算(第1号)(太陽光発電補助、畜産飼料設備補助など)
J平成22年度老人保健特別会計補正予算(第1号)(特別会計の精算)
K町道路線の廃止(石浜三本松地内・総合子育て支援センター予定地)
L町道路線の変更(生路上ノ里地内)
M町道路線の認定(石浜三本松地内、石浜工業団地北側豆搗川堤防および橋梁、藤江上廻間地内)
N国民健康保険条例の一部改正(国民健康保険法改正に伴う語句の変更)
O総合子育て支援センター建築工事請負契約の締結(鉄骨平屋建1549u,2億5851万円,アイシン開発)
P総合子育て支援センター機械設備工事請負契約の締結(給排水衛生および空調設備,3725万円,桶元)
[意見書]
Q地方議員年金制度に関し特段の措置を講じ廃止を求める意見書
R労働者派遣法の抜本改正を求める意見書
Oは落札率(落札価格/予定価格)が82%、Pは落札率62%。以前は90%台が当たり前でしたが、このところ競争が激しくなっています。
Rは共産党のみの賛成で否決。Hは共産党以外の賛成多数、他の議案は全会一致で可決しました。
どうなる地方議員年金・・・ななんと、最大会派が新しい意見書を出してきた!
1月臨時議会で「議員年金廃止を求める意見書」案を提案して、否決されたことは以前お話ししました。
反対していた自民系会派が、6月定例議会で「地方議会議員年金制度に関し特段の措置を講じ廃止を求める意見書」案を提案してきました。内容的には、「廃止は流れとして避けられないが、廃止するなら、自分たちの受給権やこれまで支払った掛金は、国の責任で満額保障して欲しい。」というものです。
私は以前書いたように、年金が破綻しようというときに国民の税金をつぎ込んでまで、既得権を主張するつもりはありません。第一、国会議員年金の廃止のときと同じく、既得権が100%保障されるとは誰も信じていないだろうと思います。既得権の保障を強く求めている点が非常に気になりましたが、まずは東浦町議会として全会一致で「廃止」を求めていくことが急務と考えて、意見書案に賛成しました。
意見書案は全会一致で可決されました。私の賛成討論の要旨は以下の通りです。
1月臨時議会で「議員年金の廃止を求める意見書」案を提出したときに述べたとおり、議員年金の破綻は時間の問題だ。あれから5ヶ月が経とうとしているが、一刻も早く、地方議員自ら廃止の意思表示をして、廃止のための準備を進めていくことが必要だ。
廃止に当たって、年金の受給権や自ら支払ってきた掛け金がどれだけ保護されるかは当事者の関心事だろうし、当然さまざまな駆け引きがあるだろう。それをどこで折り合いをつけるかの議論はこれからあるだろうが、まずは、廃止の意思を明確にして、廃止に向けて全国の議会が舵を切っていくことが急務と考え、本意見書案に賛成する。
6月19日(土)、20日(日)と愛知県内初の高浜市の事業仕分けを見学してきました。
窓口サービス業務から、ごみ収集、コミュニティバス、各種団体活動補助金、障害者扶助、高齢者生活支援、公民館管理運営、子育て推進事業、私立高校授業料補助、学校給食運営など、40事業の仕分け結果は、不要7、要改善29、継続4、民間化0でした。高浜方式の特徴は、各グループあたり、構想日本(事業仕分けを開発したシンクタンク)からの仕分け人3名と市民仕分け人2名の計5名の仕分け人に加えて、市民判定員が30名程度いることです。
傍聴者は550人ほどあったそうです。傍聴して感じるのは、仕分けメンバーにも傍聴者にも、若い世代の人たちが目立つことです。
市民に事業を理解・支持してもらうためのプレゼンテーションは、わかりやすく説得力のあるものでなくてはなりません。事業仕分けによって行政職員は相当鍛えられると思います。
この春から自分の母校でもある東浦中学校のPTA会長になりました。ついでに持ち回りで、町内の小中学校10校からなる東浦町PTA連合会の会長にも就任しました。町の諮問会議や連絡会議のアテ職がたくさん回ってきます。ここ2〜3週間でも、生徒指導、交通安全、給食運営委員会、教職員組合との教育対話集会など、平日、休日を問わず、会議の予定が入りました。
この状況の中で、「頭数を揃えるだけの会議は時間とやりがいをすり減らすだけ、やるからには活発な議論が交わされる実のある会議を」との思いが湧いてきて、一般質問の動機にもなりました。
もうひとつ、PTAの連絡協議会にかかわって驚いたのは、各学校PTAと愛知県PTA連合会の間に(各学校PTA、東浦町PTA連合会、知多東、知多、尾張、県)なんと6階層もの組織があることです。それぞれの組織で総会が行われ、似たような講演会や集会が行われ、そのつど出席の動員がかかるのです。総会では質問など出る訳もなく拍手をして帰ってくるだけです。お金もこのピラミッドの中を上に行ったり下に行ったりするわけです。これは壮大なムダです。
子どもたちの学校のためにボランティアで教育環境を整えようとするのはやぶさかではありません。しかし6階層ものピラミッド組織が必要とは思われません。これまで当然の如く行われてきたので、うすうす疑問に思っても、誰も口に出す人はいません。片隅で愚痴を言ったところで急に変わるものでもありません。一年我慢すれば任期は終わります。さて、あなたならどうされますか?
これはあくまでも私個人の目から見た議会活動報告です。意見・考え方を異にする方も居られるのは当然のことと思います。ご意見、ご批判、ご要望、アドバイス等何なりとお気軽にお寄せください。
平成22年7月10日
神谷明彦
E-mail kamiya-a@mbk.nifty.com
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