神谷明彦の3月定例議会報告 (第44号)
桜が散って、若葉が芽吹き、すっかり暖かくなりました。いま筍がいっぱい出てきています。先月、議会活動報告のダイジェスト版を新聞折込で全戸配布しました。そのせいにしてはいけませんが、3月定例議会報告が遅くなってしまったことをお詫びします。
3月定例議会本会議は3月2(火),3(水),4(木),5(金),18(木)の5回開かれました。このうち、2は議案の上程と説明、3・4は一般質問、5は議案の質疑、18は討論・採決でした。
@飲料水の水源を木曽川に
東浦以南の知多半島の上水道の水源が木曽川から長良川に切り替えられて10年以上がたちました。いまだにきれいでおいしい木曽川の水は工業用水や農業用水に使われ、我々住民は長良川河口堰の水を飲んでいるという、「あべこべ」状態が続いています。
岐阜市をはじめとする都市部の生活排水、工業排水、農業排水が流れ込む長良川河口堰の水は、木曽川中流部にある愛知用水兼山取水口の水より汚くて当然です。浄水時には活性炭など薬剤を多く注入しなければなりません。
このように、より飲料水に適していると考えられる木曽川の水こそ上水道に使うべきではないでしょうか。実際に、木曽川の水も長良川の水も知多浄水場まで配管されており、緊急時には切り替え可能な状態になっていると聞きます。
それならば、概念図に示したように、常時、配管を切り替えて、住民は木曽川の水を飲み、長良川の水は工業用水や農業用水に回すべきです。このように、水源を変更して、私たちの飲料水を木曽川の水に戻すことを、町として、国・県に強く要望すべきではないでしょうか。
町長は「水利権の問題もある。県に意見はしているが、一市町村ではどうしようもない。受水市町の足並みもそろっていない。世論の醸成が必要だ。」と答弁。
二言目には水利権が出てきますが、水源交換で他の水利権者の水量が減るわけではないのだから、協議を断る理由はないはずです。「他の市町の動向を見て」ではなく、是非東浦から力強く問題提起して欲しいものです。
A学校教育・・・(1)習熟度別授業の現状と今後は(2)ディスカッションする教育を
(1)習熟度別授業とは、学校で授業の際に児童・生徒をその教科の習熟度に応じて、複数の学級をいくつかのクラスに編成し直したり、1つの学級内で別々のコースで学習するなどして、学習の効率を上げようとする授業法です。この、習熟度別授業については積極論、消極論、さまざまな議論があると思います。小中学校での習熟度別授業の現状と効果、今後の進め方について質問しました。
教育長の答弁では、「すべての小学校で算数の約3割の時間を割いて行っている。北部中3年生では、週1時間、数学と英語で4学級を6コースに分けている。個別指導をより必要とするグループを少ない人数として、教師の目が行き届く手厚い支援をしている。子どもたちが自分のペースにあった学習ができるとして好評。」「習熟度別授業の展開には、少人数指導の加配教員が必要となるので、県に増員を要望し、町としても教科等特別指導員を継続配置していく。」とのこと。
(2)国際化が進む中、ディスカッションの能力がますます重要になってきます。ディスカッションを通じて、相手を納得させ、議論を深め、一定の結論を出す訓練を授業の中でどのように取り入れるべきでしょうか。大人を見ていても、議論が苦手で、ダンマリか、感情的ないがみ合いになりがちではと感じます。子どもたちには、文化の違う人とも対等に話しができる素養を身につけて欲しいと思います。
教育長は、「ディスカッションは、未来に生き、社会に役立つ人間として必要な能力だ。」「問題に気づき、解決のために計画を立て実行する。すなわち、調べ、実験・観察し、結果をまとめ、発表し、仲間と話し合う『問題解決学習』を社会、理科、総合学習などで取り入れている。そして、国語科を中心に表現・説明し、伝え合う力の育成が重要だ。」と答弁しました。
B地域コミュニティ施策の次なる展開は
昨年10〜12月にかけて各地区の公民館で開催された『地域コミュニティセミナー』に参加しました。住民主体のまちづくりに向け、地域コミュニティのあり方を考え直すきっかけにしようという試みだと思います。
まず、講師の伊藤雅春愛知学泉大学教授から、伊賀市の「柘植地域まちづくり協議会」で地域のまちづくり計画をつくり、学童保育、教育ボランティア、災害弱者の見守りネットワーク、観光絵地図・案内標識の作成、斎王行列の再現など、地域住民がそれぞれの得意分野を生かした活動をしている事例や、鹿児島県鹿屋市で地域コミュニティが焼酎を開発・販売して全世帯に1万円のボーナスを支給している事例の紹介がありました。その上で、地区でコミュニティバスを運営するとしたら、どんな運行形態で、どんな資金繰りにすればよいか、グループに分かれて模擬ワークショップを行いました。名案?珍案?も出てきて、全体発表会はまずまず盛り上がりました。
単発の啓発セミナーに終わらず、実際に地域の課題を顕在化させて、それを解決していく継続的な体験が必要なのではと思います。地域コミュニティが、年間イベント消化型組織から、地域課題解決型組織へ脱皮するために、今後どのような展開を考えているのでしょうか。
行政は、「6地区で合計152人の参加があった。住民が地域づくりに主体的に関わることで、地域の意見や考えが反映した、よりよい地域づくりができることを感じるきっかけになったと思う。」「次のステップとして、自主勉強会の立ち上げサポートをするとともに、がんばる地域支援交付金を創設、地域の課題を発見し解決手法を検討するための学習活動を支援する。」と答弁しました。
[条例・補正予算・その他]
@固定資産税評価審査委員の選任(戸田實氏の後任に石原弘幸氏)
A平成21年度一般会計補正予算(第6号)の専決処分の承認(子ども手当給付のための電算業務)
B職員の給与に関する条例の一部改正(労働基準法改正に伴い、時間外勤務手当および時間外勤務代休時間を指定)
C職員の勤務時間、休暇等に関する条例の一部改正(労働基準法改正に伴い、時間外勤務手当および時間外勤務代休時間を指定)
D職員の退職手当に関する条例の一部改正(不祥事等による退職手当の支給制限を明確化)
E企業職員の給与の種類及び基準に関する条例の一部改正(不祥事等による退職手当の支給制限を明確化)
F特別職の職員で非常勤のものの報酬及び費用弁償に関する条例の一部改正(不祥事等による退職手当の支給制限を明確化)
G職員の退職手当に関する条例の一部改正(不祥事等による退職手当の支給制限を明確化)
H税条例の一部改正(災害等による町民税の減免を規定)
I国民健康保険税条例の一部改正(課税限度額を医療保険分47万円、介護保険分を9万円に引き上げ)
J愛知県後期高齢者医療広域連合規約の一部改正(七宝、美和、甚目寺3町合併であま市が発足)
K武豊線浜田踏切横断排水路改修工事委託協定の変更(工事費確定に伴い150百万円を126百万円に減額)
L平成21年度一般会計補正予算(第7号)(国庫補助金、人件費、工事請負費の確定など)
M平成21年度国民健康保険事業特別会計補正予算(医療費等の確定など)
N平成21年度下水道事業特別会計補正予算(工事の翌年度繰越など)
O平成21年度緒川駅東土地区画整理事業特別会計補正予算(保留地処分の遅れと町債による資金調達)
Aは、新政権のもとで急遽決まった子ども手当の支給準備のためのもので、513万円は全額国の補助です。上記の議案はすべて全会一致で可決しました。
[当初予算]
@平成22年度一般会計予算 (139億円)
A平成22年度国民健康保険事業特別会計予算 ( 43億円)
B平成22年度土地取得特別会計予算 (1.3億円)
C平成22年度老人保健特別会計予算 (5百万円)
D平成22年度後期高齢者医療特別会計予算 (4.1億円)
E平成22年度下水道事業特別会計予算 ( 26億円)
F平成22年度緒川駅東土地区画整理事業特別会計予算(4.0億円)
G平成22年度水道事業会計予算
平成22年度(平成22年4月〜平成23年3月)予算を決定しました。一般会計は139億円、6つの特別会計(国民健康保険事業、土地取得、老人保健、後期高齢者医療、下水道事業、緒川駅東土地区画整理事業)は合わせて79億円、水道事業会計は原則独立採算の企業会計になっていて事業収益8.4億円と事業費用8.4億円を見込んでいます。
一般会計予算は、たまたま昨年度と同額になりましたが、新政権による子ども手当の創設で10億円が水増しされているので、実質129億円と見ることもできます。町民税収入は7.9%減の34億円、固定資産税収は1.1%増の37億円(南ヶ丘からの税収を含む)を見込んでいます。歳入不足分は基金の取り崩しや臨時財政対策債6億円で補っています。
土地取得特別会計では、給食センター移転用地(石浜三ツ池一区,8872u)などを購入します。老人保健特別会計は今年度で廃止、後期高齢者医療特別会計に全面移行します。
@Dは、共産党以外の賛成多数で可決。その他の予算案は全会一致で可決しました。
<学校のトイレのリニューアル>
今度の予算で、3500万円ほどかけて、小中学校のトイレを(各階に1箇所程度)全面改装して、洋式化します。それまでなら頷けますが、行政は、暖房便座、シャワートイレ、自動水洗小便器、自動水栓付き洗面器などを完備させると言います。
教育長曰く、ほとんどの家庭にウォシュレットが入ってきて、学校で用を足せない子が増えている。」「洗面台のコックが触れない子がいて、手洗いをしないとインフルエンザが心配。」だそうです。
そういう子もいるかもしれませんが、これから野外活動も経験するでしょう。災害などもあるかもしれません。それで生きていけますか?
自分は親として、子どもには無用な贅沢はさせたくないと思っています。後戻りがききませんから。
ウォシュレットも魅力ですが、自宅への設置は子どものためにも我慢しています。「ほとんどの家庭にある」とも思いません。学校の便器を暖めるだけの暖房便座も必要とは思えません。
トイレを使ったら水を流すのが教育の基本です。自分で流さなくても済むような装置が学校に必要なのでしょうか? 自動水栓つき洗面台も然りです。コックなしでキチンと掃除はできるのでしょうか?停電したらどうするのでしょうか? 障がいのある人はかえって使いづらいと聞いたこともあります。
家で子どもに聞いたら、多くの子どもが学校でトイレを使いたがらない原因は(設備にあるのではなく)掃除が不十分だからだそうです。問題の本質が掃除にあるのですから、いくらお金をかけて豪華なトイレをつくったところで無駄になるのは目に見えています。おまけに豪華にすればするほど掃除はしにくくなります。便座がまともに拭けないのに、どうやってシャワートイレの掃除をするのでしょうか?
以上のことを本会議の予算質疑でもしましたが、近年、家庭に比べて学校の設備に遜色が見られることから、特に日進月歩の水廻りは10年の計で投資したいと言うのが行政の考えです。
みなさんはどうお考えですか?
[意見書]
@障害者自立支援法の「日額払い方式」に関する意見書
A子ども手当て財源の地方負担に反対する意見書
B生産性の高い競争力に富んだ農家の育成を求める意見書
C教員免許更新制の存続を求める意見書
@は6:10で否決。ABは全会一致で、Cは10:6で可決しました。私は@ABに賛成しました。
1月29日の臨時議会で「地方議員年金制度の廃止を求める意見書」を提案!
12月定例議会報告でお伝えした通り、地方議員年金が平成23年度に破綻することが避けられない状況です。もはや、掛金を上げる、公費負担を増やす、年金受給者の給付額を少々減らす、などといった小手先の微少改良では、どうしようもないところまできてしまいました。だらだら先延ばしをしていると、際限なく住民の税金をつぎ込むことになるでしょう。それは住民の税金を守る議員の立場からして許されることではありません。
すでに、全国いくつかの議会で地方議員年金の廃止を求める運動が起こっています。私は、東浦町議会としても地方議員年金の早期廃止を求める意見書を採択しようと平林由仁議員、齋吉男議員と共に地方議員年金制度の廃止を求める意見書を提案しました。
結果は、3:13で否決。「拙速は避けて、国民的議論を」との反対討論もありましたが、破綻が秒読みの段階で何を悠長なことを言っているのでしょうか。この問題は、当事者である我々地方議員が自分のこととして捉え、国の法律を変えさせて解決せねばならないことです。
ある試算によれば廃止するのに1兆3千億円ものコストがかかると言います。それを理由に廃止に反対を主張する議員もいますが、全く的外れな主張です。この額は、年金受給者の受給権を100%保護すると仮定して、(平成81年までかかって)最後の受給権者がいなくなるまで年金を払い続けた場合の、廃止するためのコストです。年金を存続させる場合は、廃止するコストとは別に永久に公費負担(ランニングコスト)が発生します。
そもそも、右肩上がりを前提とした、支払った掛け金よりももらえる年金のほうが多くなるような年金制度が存続し得ないことは、少し考えればわかることです。これからさらに、市町村の数、議員の数、議員の報酬は減り続けるでしょう。逆に増えることはありえません。
最近、愛知県内では、名古屋市議会、安城市議会、武豊町議会が地方議員年金廃止を決議しました。廃止の流れは少しずつ拡がっていくでしょう。東浦町議会も、世の中の変化をリードしていけるようになりたいものです。
これはあくまでも私個人の目から見た議会活動報告です。意見・考え方を異にする方も居られるのは当然のことと思います。ご意見、ご批判、ご要望、アドバイス等何なりとお気軽にお寄せください。
平成22年5月4日
神谷明彦
E-mail kamiya-a@mbk.nifty.com
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