神谷明彦の9月定例議会報告  (第42号)

8月30日の衆議院選挙で大どんでん返しが起こりました。選挙による政権交代が実現して、日本もようやく民主主義先進国の仲間入りができたと言ってよいと思います。

ただし、多くの人が民主党そのものを支持したわけではなさそうです。あとは、マニフェストで約束したとおり、変えるべきをどれだけ変えられるか。また、マニフェストの中には必ずしも賛成ではなかった政策もあるはず。こういったものが、いかに将来にわたって実効性のあるものに直せるかが、大方の関心事ではなかろうかと思います。

私は、無駄な公共事業の象徴として注目されている群馬県の八ッ場(やんば)ダムや、愛知県で言えば木曽川水系導水路計画や設楽ダムについては即刻止めるべきだと思います。

一方、一律“高校学費無料化”は、やる気があって援助が必要な生徒の奨学金を充実すれば良い話だし。全国一律に“子ども手当”を配るよりは、足りない保育園をまず充実させなければならないだろうし。“高速道路無料化”にいたっては、利用のない道路はいざ知らず、東名名神など都市部の混雑路線は逆にロードプライシング(混雑を緩和するための課金)をしなければならないくらいだと思います。

 

9月定例議会本会議は9月2(水),3(木),4(金),7(月),24(木)の5回開かれました。このうち、2は議案の上程と説明、3・4は一般質問、7は議案の質疑、24は討論・採決でした。

 

 

一般質問

 

 

@小中学校の教員の増強で一人一人に目の行き届く教育を

 

次世代を育てる小中学校教育は、行政の責務の中でも最重要と考えます。教育の効果を上げるには子どもたち一人一人に目の行き届く環境をつくることが必要だと思います。

<国際的に貧弱な日本の教育費>

教育に対する日本の公的支出はGDP比で諸外国に劣っています。

1学級当たりの平均の児童・生徒数は日本では、小学校28.7人、中学校34.2人。これに対してOECD諸国(いわゆる先進国)の平均は、それぞれ21.9人と23.6人です。デンマーク、スイスにいたっては20人以下という状況。日本より多いのは韓国だけです。(OECD「図表でみる教育2004」より)

いまだに日本は「1学級40人以下」が国の基準になっています。

教育への公的支出の国際比較学級規模の国際比較

 

<小学3年生まで25人程度(2029人)学級を実現するのに必要な予算はいくらか>

公立の小中学校では、制度は国が決め、教員の人事と人件費は県が持ち、学校施設は市町村で運営しています。国・県が定めた以上の教員は、町が単独で雇わなければなりません。教員を町が単独で増員した場合の今後5年間の人件費について試算すると、20人以下学級の場合で92千万円(教員延べ162人増)、25人以下学級の場合で53千万円(教員延べ94人増)、30人以下学級の場合で21千万円(教員延べ37人増)となります。(ただし、普通教室の増設等の費用は別。教員の人件費は愛知県の平均給与月額を参考。現状の12年生では、1クラス平均28人、最大33人。)

<町単独も含めて、増員する考えは>

「町単独での少人数学級の拡大は考えていない。国や県には要望している。」との教育長の答弁です。少人数教育は国・県の責任だと言ってしまえばそれまでですが、国・県が動かなければ町単独で対応せねばなりません。

現に、子育て応援の補正予算では、保育料の全階層軽減(5年間で2.8億円)と中学生までの医療費無料化(5年間で3.3億)で、計6.1億円を町は支出します。困っている人に助成すべきことと全体に助成すべきことがありますが、義務教育こそ分け隔てなく充実すべきではないでしょうか。公教育に対する町の取り組みが後回しになっていないでしょうか。

少人数教育の効果として、町は、子どもによく目が届き、きめ細かい指導ができる、個別指導の時間が確保できると評価しています。また、全国学力調査の分析結果からも少人数指導授業は学力向上に効果があることが確認されています。学級規模を小さくする以外の対応として、町は、教員の補助をする教科等特別指導員や、通常学級の軽度発達障害支援のため学校生活支援員などの増員を検討するとのことでした。

<教員の質的向上のために何をすればよいか>

教育長の答弁では「全教員について評価制度を導入した。教科、生活指導など分野別に目標をさだめ、達成度を管理する。校長は教育長が評価する。校内外での研修や研究授業を充実させ、教員自身の資質の向上と学校組織としての組織力の向上を図りたい。」とのことでした。

 

 

Aコミュニティと地域自治のあり方

 

コミュニティ課が新設されて1年半になろうとしています。地域のコミュニティそして地域自治をどのように進めていこうとしているのでしょうか。

<コミュニティ課の使命は>

「住民・職員の意識改革を図りながら、地区と行政の協働の推進、住民自治の実現を目指している。公民館職員は、コミュニティとしっかり向き合い、話し合いながら地区と行政が協働する上での第一の窓口。」との答弁でした。

<コミュニティは、恒例イベント消化組織になっていないか>

「やらされ感」ではなく企画・参画のやりがい・喜びを得られる活動にするにはどうしたらよいでしょうか。自治の中身は、道路や水路の要望と防災だけでしょうか。

これに対する行政の答弁は「イベントは交流の場として大きな役割をになっている。一方近年の多様化する社会においては、道路・水路や防災に限らず、福祉・環境・教育・防犯・子育て支援など、幅広い課題を抱えていると思われる。それらの課題解決に向け、地区と行政が対等の立場で目標を共有し、住民がさまざまな分野で自主活動に参加していくことが、住民の自己実現、生きがいの場の創出、やらされ感の解消につながるだろう。」とのことでした。

<地域の自主性・自律性を尊重し、活動に応じて予算をつける方法は>

「住民が地域への関心を持ち、参画したくなるような地区コミュニティ作りが必要。地区と行政双方からの協働事業提案制度や、将来的には地区の意見を聞き権限委譲をともなう財政支援の可能性についても検討していきたい。」との答弁でした。

 

 

Bゼロ・ウェイスト運動で究極のごみ減量を

 

現状のように、ごみを回収し、その大部分を焼却、埋め立てをしているだけでは、なかなかゴミの減量にはつながりません。ごみの再利用、再資源化を推し進め、焼却、埋め立て処分をなくす「ゼロ・ウェイスト」の考え方について見解を求めました。

国際比較すると、日本は焼却への依存率が69%と高く、一方、リサイクル率は14%と低いです。同じ島国でもイギリスの焼却は7.3%。韓国では焼却が15%、リサイクル率は44%。(2007年 環境省データ)

かえってコストや環境負荷が大きくなることもあるので、なんでもかんでも分別すれば良いわけではありませんが、徳島県上勝町では35分別、ごみの40%を占める生ごみを回収し堆肥化しています。上勝町のリサイクル率は76%(東浦町は27%)、2020年までに焼却・埋立てゼロを目標にしています。福岡県大木町や東京都町田市でもゼロ・ウェイストの実現に向けた取り組みを開始しています。

行政の答弁は「生ごみの分別回収・堆肥化や、現在の20品目から更なる細分化など、より一層の住民の協力が必要だ。今年度からベビーカー・三輪車、来年度から自転車のリサイクルも予定している。陶磁器の分別回収も試験的に始めた。家庭の不用品を生かすフリーマーケットの開催も検討中。ゼロ・ウェイストに近づけるように資源化できるものは資源化し、3R運動を推進し、住民意識の高揚を図りたい。」とのことでした。

 

                                                                                                       

ゼロ・ウェイストの考え方

 

 ゼロ・ウェイストとは、資源の徹底した再利用と再資源化を目指すとともに、ごみの発生そのものを抑制して持続ある社会を実現しようとする考え方で、以下のような特徴があります。

 

   1. 3Rとして知られる発生抑制(リデュース: Reduce)、再使用(リユース: Reuse)、再生利用(リサイクル: Recycle)を優先させ、焼却や埋め立てを例外的な措置にしていく。

   2. ごみ削減・資源化について、数値目標の設定と達成年次を公表し、段階的に目標を実現していく。

   3. ごみになるものを生産しないよう、生産者にも責任を求める(これを「拡大生産者責任」とよびます)。

 

 3Rを具体的に実行する際の基本原則としては、4Lが重視されています。4Lとは、地域主体(Local)、低コスト(Low cost)、低環境負荷(Low impact)、最新技術によらない技術(Low tech)を意味し、安全を重視し、地域住民と一体となったごみ政策が進められます。

 地域全体がゼロ・ウェイストの考え方を共有し、それに沿った施策を実現するために、「ゼロ・ウェイスト宣言」が制定されます。

 

NPO「町田発・ゼロ・ウェイストの会」ホームページより

 

 

議案審議

 

 

[人事、条例、補正予算、請願、意見書、その他]

@教育委員の選任(久米英子氏の後任に加藤慧子氏を選任)

A平成20年度健全化判断比率及び資金不足比率の報告(国の基準をクリア)

B国民健康保険条例の一部改正(健康保険法施行令の改正に伴い出産育児一時金を増額)

C子ども医療費支給条例の一部改正(中学生までの医療費を無料化)

D愛知県後期高齢者医療広域連合規約の一部改正(春日町が清洲市に編入合併され、構成団体が減少)

E公共下水道森岡3号幹線の建設工事委託協定の締結(流入渠施設,14,060万円,日本下水道事業団)

F藤江ポンプ場の整備工事委託協定の締結(電気設備の更新,5,600万円,日本下水道事業団)

G平成21年度一般会計補正予算(法人町民税の還付、子育て応援特別手当21年度版、緊急雇用創出事業、三丁公園外周道路用地取得、河川水位監視装置の設置、インフルエンザで中学生海外派遣の中止など)

H平成21年度国民健康保険事業特別会計補正予算(療養給付費の確定)

I平成21年度土地取得特別会計補正予算(役場駐車場進入路用地取得)

J平成21年度後期高齢者医療特別会計補正予算(広域連合への負担金)

K平成21年度下水道事業特別会計補正予算(石浜地内下水道築造)

L学級規模の縮小と次期定数改善計画の実施を求める請願

M学級規模の縮小と次期定数改善計画の実施を求める意見書

Nヒブワクチンの早期定期予防接種化を求める意見書

 

Bで出産一時金が38万円から42万円に引き上げられます。Cは後述します。

Gの子育て応援特別手当21年度版では、20年度版の3〜4歳の第2子以降からさらに対象者が拡大され、3〜4歳の子すべてに36,000円が支給される予定です。対象者は1,500人と見込まれ、電算システム改修費や事務費を含めて5,700万円の予算を確保してあります。新型インフルエンザの影響で中学生のカナダ訪問が中止になり、500万円の補正減です。

上記の議案はすべて全会一致で可決しました。

 

 

[決算認定]

@平成20年度一般会計決算

A平成20年度特別会計決算

B平成20年度水道事業会計決算

 

平成20年度(平成204月〜平成213月)予算が適正に執行されたかどうかを、決算書に沿ってチェックします。決算書には一般会計137億円と6つの特別会計(国民健康保険事業、土地取得、老人保健、後期高齢者医療、下水道事業、緒川駅東土地区画整理事業)71億円、合計208億円もの使途が科目毎に記載されています。採決の結果、一般会計と後期高齢者医療特別会計は、共産党を除く賛成多数、他の決算案は全会一致で認定可決されました。

 

 

子ども(中学生までの)の医療費を無料化・・・子育て応援日本一のまちを目指して

 

中学生までの医療費無料化には、私も賛成しましたが、質疑と討論の中でいくつかの懸念点を指摘しました。

「子ども医療費支給条例」の改正では、大府市に倣って中学生までの医療費が無料になります。継続することになるので、今後毎年6700万円ほどの支出増が見込まれることになります。

自己負担なしの無料、それもいわゆる弱者のみでなく一律助成の考え方は、医療のコンビニ化という言葉があるように(医療費の無駄遣いや病院の混雑が加速するなど)サービスを受ける側のモラルハザード、そして財政のモラルハザードを招く恐れがあることを忘れてはならないと思います。

子どもを持つ親にとって、わかりやすく安心できる施策ですが、まるで量販店が安売り合戦を繰り広げるように無料化を競い合って消耗戦に引きずり込まれては、弱小自治体に勝ち目はありません。「うちの住民サービスの考え方はこれだ」という特化、差別化が必要です。

単におカネをばら撒いて、子どもたちが大人になったときに、「あなたたちのためにこれだけの借金を作ってあげたから返しなさい。」では、到底未来に希望の持てる社会とは言えません。

東浦町は過去、医療費の軽減を段階的に行ってきたのですから、データも蓄積されてくるでしょう。このあたりの問題点と効果を検証する時期に来ていると思います。

それから、拙速に市制移行を進めようと、慌てて人口を増やすためにバラマキ的な誘導策をしているとすれば問題です。きわめて短期的・短絡的な目的のために長期の支出を強いられることになります。

以上を心しておかねばならないと思っています。

一方で、これまで、他の自治体に先駆けて目立つアピールをしてこなかった東浦町が、「子育て応援日本一」を掲げたのはひとつの決心だと受け止めています。

真の子育て応援とはどういうことか。バラ撒きでない子育て応援、子どもたちにツケを残さない子育て応援、将来の豊かな社会をつくるための子育て応援とはどうあるべきか。熟慮の上で、子育てに染み付いた苦しい暗いイメージを払拭し、楽しい幸せな子育てを目指していきたいものです。今後、行政の決心を見守っていきたいと思います。

中学生まで医療費無料化は、確かにわかりやすく、即実施できる子育て応援ですが、東浦町の、そしてわが国の長期的視野にたった持続的繁栄を考えた場合、初等・中等教育関係など将来を見据えた施策展開も視野に入れていただきたいと考えます。

 

 

余談・・・ヤギさん元気です

 

熱射病にかかりやすい夏を無事クリアしました。電気柵で小屋ごと囲って昼間は好きなときに草を食べられるようになっています。

時々「見に行っていいかなあ」と小学生やお母さんに聞かれます。どうぞ遠慮なく一声掛けて見に来てください。

先日いたずらっ子たちが、葉っぱに虫などをサンドイッチして食べさせようとしていましたが、ヤギのサキちゃんにしっかり見抜かれていました。寂しがり屋でとてもおとなしいので、やさしく遊んであげればとても喜びます。

 

 

これはあくまでも私個人の目から見た議会活動報告です。意見・考え方を異にする方も居られるのは当然のことと思います。ご意見、ご批判、ご要望、アドバイス等何なりとお気軽にお寄せください。

 

平成21年10月20日

 

神谷明彦

E-mail kamiya-a@mbk.nifty.com

 

 

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