神谷明彦の3月定例議会報告  (第40号)

桜が散って、若葉が芽吹き、すっかり暖かくなりました。いま筍がいっぱい出てきています。

3月定例議会本会議は3月3(火),4(水),5(木),9(月),23(月)の5回開かれました。このうち、3は議案の上程と説明、4・5は一般質問、9は議案の質疑、23は討論・採決でした。

 

 

一般質問

 

 

@常設型住民投票制度の創設と、市制移行を住民投票で問う考えは

 

まちの将来を左右するような基本的かつ重要な政策決定について、住民の意思を直接反映する仕組みが必要ではないでしょうか。自治体の運営に直接民主的な制度を導入することは、住民の自治意識・当事者意識を高め、住民の総意によるまちづくりを進める上で重要だと思います。常設型住民投票制度を設ける考えを尋ねました。

これに対して町長は、「大衆動員による非合理的な決定や不十分不適切な情報提供による判断のゆがみが生じる恐れがある。地域のコミュニティ組織を住民の意向を集約する窓口にすればよい。また、現行の地方自治法の下で、個別の事案ごとに条例制定を求める直接請求を使っても住民投票を実施することができる。」など住民投票を必要としない理由をいくつか挙げて、現段階では常設型住民投票制度を設けるつもりはないと答弁しました。

<では本当に、コミュニティ組織を使って意見集約すれば良いのか?>

たとえば、市町村合併するかどうかを問うのに、「コミュニティで意見を取りまとめてください」なんて言いますか? 地域の問題は地域自治に任せれば良いが、町政全般のことまでコミュニティ組織に責任を負わせるのは筋違いです。町の問題は、町が直接住民と対峙すべきことです。

<大衆動員による非合理的決定や不十分な情報提供による判断のゆがみが問題なのか?>

これは、住民投票に問題があるのではなくて、行政側の姿勢の問題です。住民投票があってもなくても、住民が混乱しないように日頃からキチンと説明するのが当然です。住民だって正しい情報が提供されれば、当然判断できるはずです。住民が理解していないままに事を進めることこそ問題です。

<直接請求制度だけで十分か?>

直接請求では、そのつど争点ごとに署名(有権者の1/50)を集めたりしなければならず、準備に時間がかかります。署名を集めて直接請求しても議会で否決され、一割以下しか住民投票に至っていないという指摘もあります。だから、制度として住民投票の手続きを保障する条例を定めておくべきです。

しかし、町長は、「議会制民主主義を採っている以上、議会に任せるべき。またどんなに情報を提供しても、投票行動は理性よりも感性に訴える部分があるから、住民投票に頼るのは危険。」と反論しました。

私は、間接民主制は、生活実態などから考えて直接民主制をとることができないから止むを得ず採用していると思っています。実際に直接民主主義的な手法を取り入れられる部分については、間接民主制の補完として取り入れればよいわけだし、価値としては直接民主制のほうが高いと考えます。

ただし、議会は法律で定められた唯一の意思決定機関ですから、(議会で採決するときに住民投票の結果を尊重するにしても、)最終判断は議員一人一人の良識にゆだねられているわけです。そのために住民投票で住民の意思の確認をすることは意思決定のためにプラスになることはあってもマイナスになることはないはずです。

確かに、議員や首長は選挙で選ばれた住民の代表ですが、有権者は候補者のすべての政策に賛成しているわけではないし、当選した時点で白紙委任状を与えているわけでもありません。だから、議員や首長の意思が主権者である住民の意思とずれていると感じた場合には、住民投票によって主権者の意思を示す機会を保障する意義は非常に大きいと思います。

住民の判断は理性よりも感性に左右されがちだと言いますが、それならば、住民によって選挙で選ばれた議員はどうなるのでしょうか。

<市制移行を住民投票で問う考えは?>

町長は、市制移行についても、住民投票で賛否を問うつもりはないそうです。しかし、十分な情報発信、情報提供を行いながら、タウンミーティングや団体ヒアリング、住民意識調査(アンケート)などにより住民の意見を把握するとのこと。

 

 

A予算編成への住民参加を

 

予算編成は行政運営の基本ですが、そのプロセスは住民には見えません。ともすれば住民からの一方的な要望に終始しがちです。その予算編成の過程を住民に公表し、キャッチボールをしながら、納得づくで予算を編成していく工夫はできないでしょうか。

答弁では、予算編成の時期に住民とキャッチボールする時間的余裕がないということでしたが、いくつかのまちで実際にやっている例があります。

たとえば、滋賀県湖南市。それぞれの部局が検討した新規の重点事業、継続拡大事業、縮小廃止事業の各案をネット上に公開、市民意見を募集して予算編成への参加を募ります。予算編成方針の中で市長が「市民への説明責任を果たすことによって、市民への見える安心、職員にとっての見られる緊張を実現したい。」と述べているのは印象的です。議員あるいは会派別に出てきた予算提案を金額の内訳も含めてどう採用したかも公開しています。

我孫子市は、新規予算に限って予算の編成過程を12月から翌年2月の間に5回にわたって公表しています。そのつどパブリックコメント手続きを繰り返して最終的な予算案に揉んで行きます。その中に目的、要望額、事業の優先度、全体の予算枠、査定理由を書いて、回を経ながら予算額がどう削られるかあるいはどう復活するかをリアルタイムで見られるようにしてあります。

北広島市は市民参加条例の中で予算への市民参加を規定しています。予算編成方針や予算案の概要を公表して、予算の編成過程を市のホームページで3回公表します。

京都府京丹後市では、予算の編成方針、各部局からの要求、事業内容、その査定状況をネット上に公開。査定過程を通知した上で、再要望を受け付けています。出来上がった予算は議決後に、市民向け予算説明書としてわかりやすい言葉や写真をふんだんに使ったカラー刷りの「わかりやすいことしの予算書」という名で全戸配布しています。

これに対し町長は、「毎年予算編成の中で苦慮する問題もあるし、新規事業については試行錯誤しなければならない不安もある。そういった中でどのような方法をとっていくかはこれから十分に検討していきたいし、できた予算をできるだけわかりやすく広報していくことについてはまだまだ不十分だと思っているので工夫していきたい。」と答弁しました。

 

 

議案審議

 

 

[条例・補正予算・その他]

@ふれあい広場条例の制定(児童遊園・ちびっ子広場を名称変更し、都市公園・ふれあい広場として管理)

A職員の給与に関する条例の一部改正(地域手当を9%から7%に引き下げ)

B総合計画審議会条例の一部改正(構成員の中に住民を加える)

C職員の給与に関する条例の一部改正(郵政民営化に伴う語句の変更)

D地区計画の区域内における建築物の制限に関する条例の一部改正(東浦石浜工業用地内の建物を制限)

E町道路線の廃止(藤江上廻間地内に新路線開設のため)

F平成20年度一般会計補正予算(法人町民税収入の下方修正、東浦中学校増築の国庫補助採択、退職手当の大幅増、緒川塩田交番用地購入費など)

G平成20年度国民健康保険事業特別会計補正予算(実績に応じて特定健診を減額)

H平成20年度土地取得特別会計補正予算(一般会計に土地を売却)

I平成20年度下水道事業特別会計補正予算(事業費の確定による減額)

J平成20年度緒川駅東土地区画整理事業特別会計補正予算(事業費の確定による減額)

K平成20年度一般会計補正予算(追加)(定額給付金給付事業と子育て応援特別手当て支給事業)

 

Aは、職員の給料と管理職手当、扶養手当に9%が上乗せされている地域手当を7%に引き下げるためのものです。地域手当とは、民間の給与水準にあわせて都市部で働く公務員に手当てを支給し勤務地格差を調整するしくみです。調整手当の国の基準は非常に大雑把で、同じ生活圏なのに大府市6%、刈谷市12%、東浦町0%などとなっています。国の基準に合わせるよう指導がありますが、いきなりゼロにしてしまうと給与水準が大きく変わってしまうため、民間給与や税収、周囲の市町の動向を見ながら2%減としています。

Bは総合計画策定のための審議会に公募の住民参加を進めるためのものです。

Kは、国会での関連法案の成立を受けて、4月から定額給付金と子育て応援特別手当てを支給するためのものです。東浦町の場合、定額給付金の対象者は50,047人(うち、65歳以上9,307人、18歳以下10,012人)。1人当たり給付額は12,000円(65歳以上と18歳以下は20,000円)ですから、給付総額は約75,500万円になる見込みです。子育て応援特別手当は、第2子以降の3〜5歳児1人当たりに36,000円が支給されるもので、町内の対象者は850人、支給総額は3,060万円になる見込みです。国の政策とは言え、目的も効果もはっきりしない一時的なバラマキには疑問を感じます。それらの給付のための事務作業(住民基本台帳からの対象者の割り出し、広報、案内発送、申請受付・通知、口座振込など)には約3,560万円もの経費が必要となる見込みで、全額国が負担します。

上記の議案のうち、Aは共産党の反対があったものの賛成多数で可決、他は全会一致で可決しました。

 

 

[当初予算]

@平成21年度一般会計予算            (139億円)

A平成21年度国民健康保険事業特別会計予算    ( 43億円)

B平成21年度土地取得特別会計予算        (2千万円)

C平成21年度老人保健特別会計予算        (1千万円)

D平成21年度後期高齢者医療特別会計予算     (3.6億円)

E平成21年度下水道事業特別会計予算       ( 21億円)

F平成21年度緒川駅東土地区画整理事業特別会計予算(3.6億円)

G平成21年度水道事業会計予算

 

平成21年度(平成214月〜平成223月)予算を決定しました。一般会計は139億円、6つの特別会計(国民健康保険事業、土地取得、老人保健、後期高齢者医療、下水道事業、緒川駅東土地区画整理事業)は合わせて71億円、水道事業会計は原則独立採算の企業会計になっていて事業収益8.7億円と事業費用8.5億円を見込んでいます。

@Dは、共産党の反対があったものの賛成多数で可決。その他の予算案は全会一致で可決しました。

 

<トヨタの減産の影響は? 今後の財政運営は?>

世界的な不況の影響でトヨタ関連企業などの大幅減産の影響が心配されています。豊田市や田原市などトヨタの主力工場のあるまちでは法人市民税が大幅減収の見込みで自治体財政を直撃していると報道されたばかりです。東浦町はどうなっているのでしょうか。

 

東浦町 町税収入の内訳東浦町の歳入予算

 

田原市 市税収入の内訳田原市の歳入予算

 

東浦は、幸い?工場依存がそれほど高くないため、町税の内の主なものは固定資産税と個人町民税です。21年度予算では固定資産税の税収見込みは36億円(20年度は39億円)、個人町民税は34億円(20年度は33億円)。これに対して、法人町民税の税収見込みは2.6億円(20年度は7.0億円)、昨年度の半分以下になり4.4億円の減収です。町税全体では5.4億円の減収となり、基金を取り崩して12億円(20年度は8.3億円)を一般会計に繰り入れ、それと町債8.1億円(20年度6.7億円)でカバーしている格好です。町の主な貯金である財政調整基金の残高は17億円から11億円弱に減ってしまう見込みです。基金があるうちは基金の取り崩しで当座をしのげますが、苦しい経済状況が2〜3年も続くとたちまち基金が底をつくことになります。町長も、「今年は一般会計139億円の積極財政(20年度は138億円)を組んだが、今の経済状態が長引くことも予想され、何年も同じ手は使えない。」との認識を示しました。来年以降は個人町民税の減収も念頭に置く必要がありそうです。

ちなみに、田原市では、20年度に71億円あった法人市民税が4億円に激減する見込みで、基金からの繰入金を13億円から58億円に増やしても昨年度並みの予算規模を維持できない様子です。特定の企業に依存するまちづくりの弱点が出ました。

 

 

[請願・意見書]

@「非正規切り」防止の緊急措置と労働者派遣法の抜本改正をもとめる請願

A雇用対策の強化を求める意見書

B消費税率の増税は行わず、食料品の非課税を求める意見書

C木曽川水系連絡導水路事業に反対する意見書

 

今回、日ごろから気になっている不要不急の大型公共事業の代表格として、木曽川水系連絡導水路事業を取り上げました。下記の意見書案Cは、私が作成し、齋吉男議員と平林由仁議員が賛成者となり提案しました。採決では、我々3人と共産党3人、計6人の賛成がありましたが、自民・公明は反対。過半数の9人には届かず、残念ながら不採択となりました。

@ABは共産党のみの賛成で不採択となりました。

 

木曽川水系連絡導水路事業に反対する意見書(案)

 

木曽川水系連絡導水路事業は、徳山ダムの水を長良川を経て木曽川に導水するもので、新規利水の供給と河川流量の維持が目的とされている。総事業費3,350億円の徳山ダムに加え、さらに890億円(うち愛知県の負担は318億円)もの巨額の国民負担および県民負担が課せられることになる。このような水需要増加を前提とした大型公共事業は、人口減少、財源不足の中で考え直す時期に来ている。

木曽川水系では、水需要は逼迫しておらず、水余りといわれている。河川流量維持の効果についても疑問視されている。徳山ダムの建設のみならず、さらにまた高いコストをかけて導水事業をしなければならない必然性は認められない。工事による環境負荷は言うまでもなく、本来別の川である揖斐川の水を長良川や木曽川に混ぜることによる生態系攪乱は未知数だ。また、ダムや導水路などの大型公共事業は、着手から長期に及ぶため、景気対策としての即効性にも欠ける。

国・県の財政が逼迫している中、事業計画地における生活破壊、自然破壊などのデメリットが大きく、必要性や、効果が疑問視されている事業は中止し、その莫大な資金を必要かつ緊急性の高い用途に振り向けるべきだ。

住民、納税者として、私たちの国税、県税がより有効に使われることを求める。よって、国、県に対し、木曽川水系連絡導水路事業を中止することを求める。

以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。

 

(提出先) 衆議院議長、参議院議長、内閣総理大臣、財務大臣、国土交通大臣、国土交通省中部地方整備局長、愛知県知事

 

(提案理由) いったん計画されると止まらない公共事業を見直し、住民の税金をより有効に使うために提案する。

 

 

これはあくまでも私個人の目から見た議会活動報告です。意見・考え方を異にする方も居られるのは当然のことと思います。ご意見、ご批判、ご要望、アドバイス等何なりとお気軽にお寄せください。

6月定例議会本会議の開催予定は6月4(木),5(金),8(月),9(火),18(木)の5回で、いすれも朝9時30分からです。4は議案の上程と説明、5・8は一般質問、9は議案の質疑、18は討論・採決です。11(木),12(金),15(月)には常任委員会が予定されています。

 

平成21年4月20日

 

神谷明彦

E-mail kamiya-a@mbk.nifty.com

 

 

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