神谷明彦の12月定例議会報告  (第39号)

不景気風の吹く中、なんとなくさびしいお正月でした。政府の無策が糾弾されていますが、20年前のバブルのときと同じで、調子が良いときに煽るだけあおって、調子がおかしくなると犯人探しの大合唱をするマスコミの姿勢にも大いに問題があると思います。

12月定例議会本会議は12月5(金),8(月),9(火),10(水),19(金)の5回開かれました。このうち、5は議案の上程と説明、8・9は一般質問、10は議案の質疑、19は討論・採決でした。

 

 

一般質問

 

 

①市制施行にともなう出費増はどの程度か

 

東浦町は、市制施行を前提に準備を進めているのですから、市になることによって何がどう変わるかを明らかにする必要があります。

<公務員の給与、報酬を上げるなどして、人件費支出が増えることは考えられるか。>

こういう質問をすると行政は、市と町の給与体系は変わらないと言ってはぐらかします。しかし、現に類似規模の近隣他市との格差があればヨコ並びの意識が生まれるのは人情だと思います。

役所では、公務員の給与を比較するのにラスパイレス指数という指標を使います。東浦町のラスパイレス指数は93.9。近隣市よりも1~5ポイント低いそうです。この違いがそのまま人件費に反映されると仮定すると、近隣市にあわせて人件費を5%アップさせたとして、19年度決算の人件費27億円の5%は、ざくっと1.3億円。議員報酬を見ると、東浦が報酬月額25.2万円のところ、15万円プラスとして、ざくっと5千万円。退職金は考慮せずに計2億円弱の経費増となります。(本当に大雑把ですが、少なくとも何千万円なのか、何億円なのか、何十億円なのかは、イメージできると思います。)

<権限の移譲にともない発生する費用はどの程度か。>

県から市に移譲されるものとしては、福祉事務所関連がほとんどで、生活保護費や児童扶養手当などを過去の実績から推定すると約1.2億円の持ち出しとなる見込みです。

行政は、「地方分権改革推進委員会の第1次勧告では、基礎自治体に委譲すべき事務として359の事務が挙がっている。中には農地の転用、都市計画の決定権限(市街化線引き以外のもの)などもあるが、そのうちどれだけの事務が委譲されるのかは不明。今後の情勢を見極めながら積算する」との答弁でした。

権限といっても意思決定(自由裁量)の幅が広がるものと、単なる定型業務(負担)の両方があります。国や県が易々とおいしい権限をくれるかどうかは疑問です。

<電算システムの変更に関わる費用はどの程度か。>

調査中でまだわからないそうです。行政は、21年度半ば頃までに概算数字をつかみたいとしています。

<その他の費用は。>

看板掛け替え、印刷物の訂正、記念イベントなど市制移行時にかかる経費として、行政は近年単独市制を敷いた栗東市を参考に8千万円と試算しています。

<権限を手に入れて仕事する意気込みはあるか。>

これらを足しこむと、初年度は4億円、以後3億円以上のお金が毎年必要になる計算です。今後、財政的に苦しいなか、そのお金で何かほかのことができるのではという考えだってあり得ます。

東浦町としては、それ以上に、権限を取って自ら能動的に住民サービスを向上させるつもりと解釈しますが、市になってこういう仕事をしてみたいという、その意気込みがなければ住民を説得するものにはならないだろうと思います。

<市を目指すことの意味は>

行政の目的は住んでいる人々の幸福の追求でしょうから、人口が増えればそれで良い、市になればそれで良いというわけではないでしょう。たとえば、人口が増えれば当然、負の面として、渋滞したり、治安が悪化したり、社会資本が不足したりという問題も起こります。実際にそれを心配している住民もいます。

町長はまちの経営者なので、住民のみならず行政職員にも、夢なり目標なりを提示する必要がありますから、「市を目指す」意味を否定するつもりはありません。ただ、市になること自体がどういう中身をともなうのか、冷静に考える必要があると思います。

これに対し、町長は、「国は地方分権改革で市と町村の違いを明確に出してきた。これが実施されると町村の自由裁量の部分は狭くなる。地方自治体としての役割を果たすには、市制を敷いて県から移譲される権限を受けることが必要。単に名称やステータス、イメージの問題ではなく、切実に行政サービスに違いが出てくることを住民に理解していただけるようこれから広報活動に力を入れる。」と強調しました。

 

東浦町と人口同規模・近隣市の人件費比較

 

※ラスパイレス指数とは、国家公務員を100として地方公務員の給料(基本給)を比較したものです。しかし、期末・勤勉手当や地域手当、その他諸手当はこれに含まれていません。あくまでも基本給の比較なので、役所の人件費あるいは職員の年収を比較するものではありません。上の表では、各自治体がホームページで公表している「人事行政の運営等の状況」から人件費に関するデータを取り出して比較しました。

 

 

②自治基本条例の制定について

 

「地方自治体の憲法」として「自治基本条例」や「まちづくり基本条例」を制定する動きが盛んになってきました。住民の権利と責任、行政の責務、議会の責務、まちづくりの方向性、住民と行政の協働、情報公開と説明責任、住民投票に関することなど地方自治・住民自治についての基本的な理念と定めを盛り込んだ東浦の自治基本条例の制定を目指してはどうかと質問しました。

行政の答弁では、「地方分権改革の中で、自己決定、自己責任による行政運営が求められている。」「ニセコ町まちづくり基本条例を始まりに全国的に制定への動きを見せている。」「しかし、このような自治の根幹のための条例の策定過程では、住民にかかわっていただくことが重要。住民のコンセンサスを得ながら研究を重ね、機が熟したときに住民と協力しながら生成していくものと考える。」とのこと。

まさにその通りと思いますが、時間切れ。「機が熟す」とはどういう状態か、またどうすれば目指す状態になるのか、さらに突っ込んだ議論はお預けです。

 

 

③これからの都市公園のあり方は

 

市民にとって、公園は、さわれない、見るだけ、既製の遊具を規定に沿って使うだけの施設となっていないでしょうか。

<計画段階から市民意見を積み上げて作っていく公園にしていくべきでは。>

公園は、設計から管理まで行政が握っていましたが、それを地域や利用者に返していく発想が必要ではないかと思います。ただし、利用者の意識の変革も必要です。今まで問題が起こるたびに、管理者である行政の責任を安易に問いがちだったのではないでしょうか。苦情が出るたびに、公園のデザインの自由度が狭まりいろんな規則ができ、公園と利用者の距離がますます広がるという悪循環があったのではと思います。これからは、地域住民が共有空間の使い方を自分たちで考えていく方向にできたらと思います。

行政の答弁では、「これから整備する公園については、ワークショップの開催やパブリックコメント手続を行い、住民の積極的な参加による計画策定が必要。参画した方々には、整備後の美化、清掃活動等の管理にも参加してもらい、画一的でない、身近で愛着が持てる公園作りをしたい。」とのこと。

住民参加で必要なことは、柔軟な意見を引き出すために会議形式ではなく(絵を描いたり、現場でイメージを膨らませたりできる)ワークショップ形式でやること。行政職員も参加して対等に作業をすれば良いと思います。メンバーはアテ職で選ばない。利用者で関心のある人を公募するのが良いと思います。そして、行政が先に案を提示して承認をとる形にしないことです。固まった案を示してこれでいいですねとやると(考える猶予がないと)どうしても易きに流れます。

<完成したら終わりではない。その時々のニーズによって柔軟に変化していく公園に。>

東京都大田区の住宅街に「くさっぱら公園」というのがあります。固定遊具はありません。利用者が花を育てても良いし池を掘っても良い。ただし、管理する会議があって、月に一回、地域住民に行政職員を交えてどうするかの話し合うのだそうです。そんな利用者の考えで変化する公園があって良いと思います。

答弁では、「今後、希望者に管理を任せるアダプトプログラム(里親制度)をとり入れる。」「鉄棒、ブランコ、滑り台の3点セットにこだわらず、必要なものを取り入れていけばよい。地域さえまとまればサッカーをしたってかまわないと思う。」とのこと。

<子どもたちが自己責任で好きな遊びができる冒険遊び場にできないだろうか。>

冒険遊び場では、焚き木、木登り、焼き芋、穴掘り、食事を作ってもいい、川を流してダムを作ってもいい、ツリーハウスを作ってもいい、とにかく何をやっても良い。近くでは、知多市の「そうりプレーパーク」や名古屋の「てんぱくプレーパーク」などの事例がありますが、万一のためにプレーリーダー(子どもたちの見守り役)がいるのが前提になります。

答弁では、見守り役をやってくれる熱心な人がいれば大歓迎とのことですが、行政にも管理者としての覚悟と柔軟性が求められます。

 

 

議案審議

 

 

[人事、条例、補正予算、請願、その他]

①人権擁護委員の推薦(水野和子氏の再任)

②職員の給与に関する条例の一部改正(育児休業法の改正に伴う(育児)短時間勤務制度の導入)

③企業職員の給与の種類及び基準に関する条例の一部改正(同上)

④職員の退職手当に関する条例の一部改正(同上)

⑤職員の育児休業等に関する条例の一部改正(同上)

⑥職員の勤務時間、休暇等に関する条例の一部改正(同上)

⑦公文書公開条例の全部改正(公文書公開条例を情報公開条例に改め開示の対象を拡大)

⑧個人情報保護条例の全部改正(行政の保有する個人情報の開示、訂正、利用停止を請求する個人の権利を規定)

⑨職員定数条例の一部改正(育児休業中の職員を定数外とする規定を付加)

⑩税条例の一部改正(地方税法の改正に伴い寄付金税額控除の対象を拡大)

⑪国民健康保険条例の一部改正(出産育児一時金を35万円から38万円に増額)

⑫東部知多衛生組合規約の一部改正(組合議会の議員定数を1612に削減、東浦選出の議員は43へ)

⑬藤江ポンプ場の建設工事委託に伴う変更協定の締結(ポンプ増設工事費の確定に伴い1.5億円を1.2億円に減額,日本下水道事業団)

⑭藤江ポンプ場の建設工事委託の伴う変更協定の締結(電気設備工事費の確定の伴い107百万円を88百万円に減額,日本下水道事業団)

⑮平成20年度一般会計補正予算(森岡西保育園石綿除去工事などを含む)

⑯平成20年度国民健康保険事業特別会計補正予算(出産育児一時金の増額などを含む)

⑰平成20年度下水道事業特別会計補正予算(工事委託料の確定などを含む)

⑱平成20年度緒川駅東土地区画整理事業特別会計補正予算(国庫補助金(まちづくり交付金)の増額)

⑲平成20年度水道事業会計補正予算

⑳介護職員の人材確保の意見書採択を求める請願

 

⑦は、情報公開対象となる公文書の定義を広げ、決済や閲覧の済んでない文書や電磁データも公開対象とするものです。私が9月議会の一般質問で指摘したことが実現しました。

⑪により、出産育児一時金が、今年から始まった産科医療補償制度(分娩に際して発症した脳性麻痺を補償)の掛金3万円分を上乗せして38万円になります。⑫は共産党以外の賛成多数で可決、⑳は共産党のみの賛成少数で不採択、他の議案は全会一致で可決しました。

 

 

う・ら・ら新路線の利用状況と、町運行バス運行開始以来のまとめ

 

平成20101日に知多バスの路線の廃止を受けて、東浦町運行バス「う・ら・ら」の新路線が低床バスを1台加え、計4台体制で運行を始めました。1012月の利用者は前年同月と比べて5.6%の微増。刈谷方面や国道沿いなどに路線が広がり運行本数が増え、運行経費が1.6倍になった割には利用者が増えていません。路線あたりの便数が減ったこと、緒川駅での乗換えが敬遠されていることなどが利用者の伸びない理由ではないかと思います。まだ3ヶ月しかたっていないので今後の推移を見守りたいと思います。

新路線開設前のう・ら・らの運行実績をまとめてみました。下表は、年間利用者10万人以上の県内他市町のコミュニティバスとの比較です。う・ら・らの利用は県内市町の中でも上位の22万人余り。運行経費は最低、運行収入も比較的多いため経営状態は県内トップ。人口当りの利用者も日進市についで2位、全住民が年間平均4.6回乗っている計算です。

平成13年のう・ら・ら開設以来の利用者は累計123万人、バス購入費を含めた全経費23900万円、運行収入は9200万円。町(税金から)の負担は14700万円になりました。

 

 

 

ため池の環境をテーマに授業&厄松池のお掃除ボランティア

 

1030日に生路小学校の5年生の授業で、ため池の環境(ため池の歴史、立地と役割、だれのものか、水質と私たちの生活、清掃活動、池の今後)をテーマに講師を務めました。早いものでもう6年目です。

119日(日)は厄松池の清掃活動。小学校の4~6年生が80人ほど加わりました。草を刈って、草の間に落ちている缶やビン、ペットボトル、お菓子やコンビニ弁当の容器などのゴミを拾い、燃えるものと燃えないものに分けてゴミ袋に詰めていきます。今年は常連メンバーに加え、保護者の飛び入り参加や、先生の参加がたくさんあって、それぞれの持ち場でテキパキと作業がはかどりました。

ポイ捨てのゴミはずいぶん減ってきてゴミ袋(大)に5袋ほどでした。燃えるゴミは全部で150袋ほどで、大部分は草です。子どもたちが作業しやすいだろうということでゴミ袋に詰めることにしたのですが、袋がもったいないという指摘がありました。来年のための反省点にしたいと思います。

 

 

これはあくまでも私個人の目から見た議会活動報告です。意見・考え方を異にする方も居られるのは当然のことと思います。ご意見、ご批判、ご要望、アドバイス等何なりとお気軽にお寄せください。

3月定例議会本会議の開催予定は3月3(火),4(水),5(木),9(月),23(月)の5回で、いすれも朝9時30分からです。3は議案の上程と説明、4・5は一般質問、9は議案の質疑、23は討論・採決です。11(水),12(木),13(金)には常任委員会が予定されています。

 

平成21年1月28日

 

神谷明彦

E-mail kamiya-a@mbk.nifty.com

 

 

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