神谷明彦の9月定例議会報告  (第38号)

10月初旬にお休みを取ってブータンに行ってきました。インドとチベットに挟まれた素朴なヒマラヤの山国です。国王はGNP(国民総生産)ではなくGNH(国民の総幸福度)の向上を国家目標に掲げ、自然環境と伝統文化を守りつつ持続ある社会の発展を目指しています。我々先進国はこれまで対前年売上や時価総額などひたすら物質主義的な金額増大を追求してきましたが、空虚な信用膨張や信用収縮を目の当たりにする中で、本当の幸せとは何かを考える時期に来ているのではないかと感じます。

9月定例議会本会議は9月3(水),4(木),5(金),8(月),22(月)の5回開かれました。このうち、3は議案の上程と説明、4・5は一般質問、8は議案の質疑、22は討論・採決でした。

 

 

一般質問

 

 

@公文書の公開について・・・東浦町の公文書公開条例は時代遅れ!

 

193月定例議会にも指摘しましたが、町の保有する多くの情報が、紙文書から電磁データに置き換えられています。電磁記録を文書として規定していない公文書公開条例は時代遅れと言わざるを得ません。また、実施機関が保有している記録のうち、決済・閲覧等の手続が終了しないと公文書として公開の対象にしないのは情報公開の流れに逆行するのではないでしょうか。役所のオーナーである住民の知る権利を十分に尊重する「情報公開条例」へのグレードアップを求めました。

 

情報公開対象となる公文書の定義の県内他市町村との比較(阿久比町の例、条文の抜粋)

東浦町公文書公開条例における公文書の定義

阿久比町情報公開条例における公文書の定義

実施機関の職員が職務上作成し、又は取得した文書、図画、写真及びスライドであって、決裁、閲覧等の手続が終了し、実施機関が管理しているものをいう。

 

実施機関の職員が職務上作成し、又は取得した文書、図画及び電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られた記録をいう。以下同じ。)であって、当該実施機関が保有しているものをいう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

行政の答弁は、文書管理システムの導入に合わせて12月議会に条例改正案を提案したいとのこと。決裁・閲覧を公開の条件にするかどうかは、愛知県や先進地の事例を研究したいとのこと。

東浦でもワークショップや公募など計画段階からの市民参加が進んでいます。決裁・閲覧が済んで内容が固まってしまってから初めて知らされるのでは計画段階からの参加は不可能です。都合の悪い情報ほど共有化して、みんなで議論する姿勢が重要です。県内の市町村を調べてみると、ホームページで条例を確認できるようになっている3421町村のうち、決済・閲覧が終了していない情報を公開の対象にしないのは東浦町、犬山市、扶桑町と設楽町のみです。条例の公文書の定義の部分にいまだに制限を設けているのは少数派、「事例を研究」するまでもなく結論は見えていると思います。

さらに付け加えるならば、「公文書公開」というと狭いイメージがあります。「公文書公開条例」と呼んでいるのは東浦町と江南市のみで、他の自治体は「情報公開条例」と名付けています。

条例の中で、「正確でわかりやすい情報提供に努める」「審議会などの会議の公開」「指定管理者や出資法人の情報公開」など一歩踏み込んで、情報公開の総合的な推進に言及している県内自治体もあります。合わせて「研究」していただく良い機会だと思います。

ところで、町は今年度中に文書管理システムを導入する予定ですが、このシステムの中で情報公開への配慮はされているのでしょうか。文書管理システムは、行政の文書をデータベース化し決済や検索の機能を持たせるものです。情報公開に対応する機能は想定していないとのことですが、せっかく文書の組織的管理をするのだから、内向きの利用ばかりではなく、住民の情報アクセスに対する利便性向上に役立てるべきだと思います。

 

 

A行政評価の今後・・・外部の目と公開の場で事業の取捨選択を議論

 

行政評価の導入により、一定の意識改革にはつながったと評価できますが、住民、納税者の目線で事業を取捨選択するところまでは至っていないのではないかと思います。

18年度から公表されるようになった各事務事業の評価結果を見ると結構甘さが目につきます。たとえば、行政サービスコーナー(イオンにある行政窓口)の事業内容は、住民票の写しを14件ほど交付。刊行物やう・ら・らの定期券を販売していますが評価の対象にはなっていません。ほかにはインターネット体験がありますがいまどきどこでも体験できることです。一方コストは年間約1300万円。これだけの判断指標で、妥当性評価Aで拡大継続すべきとの結果がいとも簡単に出てくるのは疑問です。せっかくやるなら、やるふりだけではなく効果が出るようなものにしなければなりません。

そこで、民間シンクタンク「構想日本」の提唱する「事業仕分け」のように、より厳格でオープンな手法は考えられないでしょうか。事業仕分けとは、外部の評価者を入れ、公開の場で、行政職員に説明を求め、そもそも論で原点に立ち返って議論し、個々の事業を「不要」「民間、国・県、市町村」「要改善」などに仕分けする作業です。他自治体の職員、民間、地方議員などからなる構想日本の仕分けメンバーが乗り込んできて、行政担当者に説明を求め、かなり厳しい質問で険悪な雰囲気になることもあるそうです。国・県が言っているからとか、去年もやりましたとかいう言い訳は一切なし。非常に刺激になるはずです。事業仕分けは、東浦町と同規模の自治体でも行われています。作業は公開されているので参考にしてはどうかと思います。

行政の答弁では、「今後も、わかりやすい指標や数値目標を定めるなど精度を高める努力をしたい。」「施策評価を取り入れ事業の優先順位を公表する。」「評価項目と、策定中の第5次総合計画、予算との関連を明確にしたい。」とのこと。また、事業仕分けについては、行政評価との整合性や先進地の状況などを見ながら研究したいとのこと。

 

 

議案審議

 

 

[人事、条例、補正予算、その他]

@教育委員の選任(久米賢治氏の再任、本田眞哉氏の後任に仲川幸造氏を選任)

A平成19年度健全化判断比率及び資金不足比率の報告(国の基準をクリア)

B特別職の職員で非常勤のものの報酬及び費用弁償に関する条例の一部改正(地方自治法の改正に伴う語句の変更)

C議会の議員の報酬及び費用弁償に関する条例の一部改正(地方自治法の改正に伴う語句の変更)

D特別職報酬等審議会条例の一部改正(地方自治法の改正に伴う語句の変更)

E安全なまちづくり条例の制定(県警からの要請に基づき、町、住民、事業者の責務を明確化)

F子ども医療費支給条例の一部改正(中国残留邦人等の円滑な帰国の促進及び永住帰国後の自立に関する法律の改正に伴う規定の整理)

G障害者医療費支給条例の一部改正(同上 規定の整理)

H母子家庭等医療費支給条例の一部改正(同上 規定の整理)

I精神障害者医療費支給条例の一部改正(同上 規定の整理)

J公益法人等への職員の派遣等に関する条例の一部改正(法律改正に伴う語句の変更)

K認可地縁団体印鑑の登録及び証明に関する条例の一部改正(地方自治法の改正に伴う語句の変更)

L後期高齢者医療に関する条例の一部改正(保険料の納期を調整)

M先端産業育成条例の一部改正(県の要綱改正に伴い交付金の交付要件を緩和)

N知北平和公園組合規約の一部改正(組合議会の議員定数を12から9に削減、東浦選出の議員は4から3へ)

O町道路線の変更(藤江ふじが丘地内)

P平成20年度一般会計補正予算(地方税電子申告システム導入費、10月からのバス運行費、福祉施設への補助、浄化槽設置費補助、図書検索システム機器購入費など)

Q平成20年度国民健康保険事業特別会計補正予算(療養給付費の確定)

R平成20年度老人保健特別会計補正予算(事務委託費の確定)

S平成20年度緒川駅東土地区画整理事業特別会計補正予算(保留地の売却、起債の減額)

 

@では、地方教育行政法の改正に伴い、児童・生徒の保護者を教育委員に加えるよう義務付けられたため、新たに仲川氏が選任されました。

Aは、財政健全化法で自治体の財政健全化指標の公表が義務付けられたことによるものです。愛知県に住んでいるとあまり感じませんが、夕張をはじめ全国の地方自治体の財政は惨憺たる状況です。幸い東浦町は国の基準を満たしています。基準をクリアできずに黄信号がついたら財政健全化計画を策定し自主改善を図らねばなりません。赤信号の場合は国の管理下で財政再生を進めねばなりません。

Mでは、交付金の対象を先端産業分野の工場の新設のみから増設まで拡大、交付単位も1企業10億円までから1事業所敷地につき10億円までに改められました。東浦では11年度に進出したSTLCDに対し建物および設備の固定資産税の2倍相当額の8.1億円が交付されています。

MPは共産党の反対があったものの賛成多数、他の議案は全会一致で可決しました。

 

 

[決算認定]

@平成19年度一般会計決算

A平成19年度特別会計決算

B平成19年度水道事業会計決算

 

平成19年度(平成194月〜平成203月)予算が適正に執行されたかどうかを、決算書に沿ってチェックします。決算書には一般会計130億円と5つの特別会計(国民健康保険事業、土地取得、老人保健、下水道事業、緒川駅東土地区画整理事業)90億円、合計220億円もの使途が科目毎に記載されています。採決の結果、一般会計は、共産党を除く賛成多数、他の決算案は全会一致で認定可決されました。

過去最高の決算です。税収も伸びて88億円に、これに手数料や使用料収入を含めた自前の収入(自主財源)は106億円。一般会計歳入総額135億円に対する自主財源の占める割合は78%になりました。

しかし、来年以降は経済悪化の影響がモロに効いてくるものと思われます。絶好調だったトヨタにも陰りが見えてきました。町の借金は一般会計で101億円、特別会計も合わせると203億円です。調子に乗って財政規模を大きくするのは禁物です。もはや右肩上がりの時代ではありません。少子高齢化、団塊世代の大量退職が待っています。社会保障や福祉をはじめとする公共の課題は増える一方です。

ここで、「公共=役所」という考えを切り替えて、みんなで支え合う大きな公共は必要だけど、行政は小さな政府で回していく知恵を出さねばなりません。さもないと裕福だといわれる愛知県の自治体でさえ持続は不可能です。公共に関わることの中にも、役所ですべきこと、個人でできること、地域でできること、民間企業でできること、などたくさんあるはずです。

町税収入の推移借金残高の推移

 

 

[議員提案、請願・意見書]

@議会政務調査費の交付に関する条例の一部改正(地方自治法改正に伴う語句の変更)

A議会会議規則の一部改正(地方自治法改正に伴い、非公式な連絡会だった全員協議会を協議・調整の場として位置づけ)

B学級規模の縮小と次期定数改善計画の実施を求める請願

C学級規模の縮小と次期定数改善計画の実施を求める意見書

D道路財源の確保についての意見書

E食料自給率の向上を求める意見書

 

本来、意見書は議員が自らの問題意識に基づいて、国、県、市町村などの行政にものを申すものですが、業界団体や労働団体や役所の作った文章をそのまま借りて意見書にしていたのが実態です。今回DEでは、議会内で各会派が自分たちで作った意見書案を持ち寄って何度も修正しながら合意に至りました。これを良い機会に、自分たちで考え、案を練り、合意をつくりあげていくプロセスを磨いていきたいものです。

@ABCDEともに全会一致で可決されました。

 

 

文教厚生委員会で世田谷区羽根木プレーパークと北区立神谷中学校を視察

 

羽根木プレーパークは、焚き火、木登り、穴掘り・・・自己責任で自由に遊べる冒険遊び場。都市公園の一部を使ってNPOが運営、自ら育とうとする子どもの力を応援します。ある夫婦が始めた活動が発展し、今では世田谷で4か所、全国で200か所以上に広がりました。知多半島でも佐布里池などで活動しているグループがあります。

神谷中学校で5年前に始まった「パワーアップ教室」は土曜日に無料の補習授業を行います。全生徒を4コースに分け、教職員全員と近くの私立高校の教員・生徒がボランティアで教師を務めます。進学実績や学区外からの入学希望者が急増するなどの成果が出ています。神谷中学校は埼玉県の提携農家で生徒自らが育てた作物を給食で食べるなど、食農教育にも力を入れています。

 

 

う・ら・ら新路線が運行開始

 

101日に知多バスの路線の廃止を受けて、東浦町運行バス「う・ら・ら」の新路線が低床バスを新たに加え計4台体制で運行を始めました。慣れるまでは緒川駅での乗り継ぎがわかり辛いかと思いますが、東ヶ丘、長寿医療センター、平池台、刈谷駅・総合病院の各方面が結ばれました。限られた車両台数で路線網を構築し、乗り継ぎ接続のタイミングは勿論、運転手の休憩時間や空港バスやタクシーなど他の公共交通機関との競合まで配慮してダイヤを組むのは至難の業です。

データがそろったら次回の議会報告で、これまでのう・ら・らの運行実績(利用者数、収支)をまとめてみようと思います。

 

 

自然環境学習の森 計画づくりワークショップのその後

 

第1回(6/21),第2回(7/5)のワークショップで出た意見を参考に、行政が整備計画の素案をまとめました。105日に、我々ワークショップ参加者に対して素案の説明があり、意見交換をしました

素案の基本的な考え方は、本来の里山の姿に戻す、できる限り人工物をつくらない、もともと無いものは持ち込まないことです。必要最低限の整備にとどめ、運営管理の中で必要に応じて施設の充実を図っていくことが望ましいと思います。

行政は、学習の森入口近く(新池の北側)の約1,300uの敷地に学習室、展示室、トイレ、器具庫などを備えた建物を建て、林内には炭焼き小屋、散策路、水辺の木道などの整備をすることが必要と考えています。また、自然環境学習の森の管理・運営に関わるグループが自発的に立ち上がるのを期待しています。

「必要以上に手を加えず、本来の里山に戻す」ことを基本としつつ、訪れる人が楽しみながら自然と親しむことができる場所にしていければ素晴らしいと思います。

 

 

厄松池の掃除をします

 

今年も、生路の厄松池の掃除をします。雑草を刈って、ビンやカンやペットボトルなどのゴミを拾って、池の冬支度をします。

11月9日(日)9:30に厄松公園集合、午前中に終わりたいと思います。飛び入り大歓迎ですので、皆さんのご協力、ご参加を心よりお待ち致しております。環境をテーマに学習をしている小学生もボランティアでお手伝いに来てくれる予定です。

 

 

これはあくまでも私個人の目から見た議会活動報告です。意見・考え方を異にする方も居られるのは当然のことと思います。ご意見、ご批判、ご要望、アドバイス等何なりとお気軽にお寄せください。

12月定例議会本会議の開催予定は12月5(金),8(月),9(火),10(水),19(金)の5回で、いずれも朝9時30分からです。5は議案の上程と説明、8・9は一般質問、10は議案の質疑、19は討論・採決です。12(金),15(月),16(火)には常任委員会が予定されています。

 

平成20年10月29日

 

神谷明彦

E-mail kamiya-a@mbk.nifty.com

 

 

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