神谷明彦の3月定例議会報告  (第36号)

春の花が咲き始めて、鼻がむずむずする季節になりました。

3月定例議会本会議は3月3(月),4(火),5(水),7(金),21(金)の5回開かれました。このうち、3は議案の上程と説明、4・5は一般質問、7は議案の質疑、21は討論・採決でした。本会議で上程された議案は3つの常任委員会に分割付託され審査の後に、本会議最終日に採決されました。

 

 

一般質問

 

 

@第5次総合計画の策定について

 

平成20年度から第5次総合計画の策定作業に入ります。10年間(平成23年〜32年)にわたるまちの将来像を描く重要な作業です。コンサルタント任せのどこのまちの物ともつかない玉虫色、総花的な総合計画から脱却し、まちの主役である住民の意向を十分に反映した東浦ならではのものが求められます。

<今後のスケジュールは>

216月ころまでに行政幹部からなる策定委員会で素案を作り、それをたたき台に21年度中に住民参加のまちづくり委員会で原案を取りまとめます。22年度には総合計画審議会に諮問、12月定例議会で議決の予定です。

<どんなまちを描こうとしているのか>

行政は、市制施行を前提とし、少子高齢化の進行、環境問題への関心の高まり、地方分権型社会の到来など、社会環境の変化を把握し、健全な財政運営を目指すとしています。

<策定作業の進め方にはどんな工夫をするか>

答弁によれば、「20年度には、3000人規模のアンケート調査、各種団体ヒアリングを行い素案に反映。住民と職員が参加するまちづくり講演会を開く。まちづくり委員会、総合計画審議会には住民公募の委員や、将来を担う中学生の意見も取り入れたい。22年度には、原案に対するパブリックコメント、タウンミーティング。ホームページ上でも策定状況を公開、できるだけ住民の意見を聴く機会をつくる。」とのことです。

これまで東浦町は公募による住民参加に消極的でしたが、「時代の流れ」として、意欲ある人に参加してほしいとの立場です。公募の人数等具体的なことは未定ですが、是非、固まった案を示して承認を迫るような従来のやり方はやめにして、意思形成過程の参加を重視してほしいと思います。

<目標値の設定や行政評価との連動は>

総合計画に行政の目標値を設定して目標管理、行政評価と連動するなど、行政経営手法を組み込めないでしょうか? 多治見市では基本計画の中にマニフェスト的な内容を組み込んでいます。

これに対しては「右肩下がりの社会情勢の読めない中で、具体的数値の設定は難しい」との答弁でした。

<豊かさとは、幸福とは>

右肩上がりで成長する時代は終わりました。これからは、「豊かさ」とは、「行政の役割」とは、「福祉の増進」とは何か、立ち止まって考えることが必要です。GNP(国民総生産額)ではなくGNH(国民総幸福度)を提唱している国もあります。総合計画も視点が変わってくるのではと思います。

 

 

A市制施行をめざすことについて

 

東浦町は、次回(平成22年)の国勢調査で人口5万人に乗せ、市制施行を目指すとしていますが、メリットとデメリットをできるだけ明確にする必要があります。また、持続的発展をすることが重要であり、市になること自体が目的化してしまっては本末転倒だと思います。

<市制施行のメリット・デメリットをどう捉えるか>

行政の答弁では、「市になると都会的なイメージになる。福祉事務所(生活保護の決定、障害児福祉手当支給、母子家庭の支援事務)の設置など権限移譲が進む。同時に専門職員の育成が課題になる。一方、市街化区域内農地が宅地並み課税となり所有者の税負担は増す。」とのこと。

昔は市になるのは「出世」であり一つの価値でしたが、市町村合併で市のステータスも落ちました。町村のほうが希少価値が出てきて、逆のイメージさえあります。名前が「市」になるだけでそんなに良いことがあるのでしょうか?

<住民にもわかる説明を>

市だと一部の福祉行政を(県を介さず)直接行わなければなりませんが、本当にメリットなのでしょうか? 住民に実感のわく説明が必要です。町長は、市にならないと国・県が一人前に扱ってくれないし、今後その傾向が更に強まると強調します。行政権限は、行政関係者には実感があるかもしれないけれど、住民にとっては実感のわかない分野です。

<町から市になるのに伴い、人件費(給料、報酬)はどう変わると考えられるか>

人件費を職員の数で割ったもの(H18年決算データから)を類似の人口規模の市と町で比較すると、常滑市(人口51000人)907万円、新城市(52000人)856万円、大府市(80000人)877万円、高浜市(41000人)859万円、岩倉市(47000人)958万円。一方、東浦町(48000人)は779万円とかなり違います。

これを他市並みに引き上げると、公務員にとってはメリットがありますが、住民にとっては人件費負担が増えます。1割増えれば、年間約3億円が出ていく計算になります。市制施行のどさくさにまぎれて便乗値上げをするのではなく、キチンと説明したうえで議論すべきです。

町長は、「町だから給料が低いというのもおかしい。職員採用にも影響するので、近隣とのバランスが必要。」との見解です。しかし、住民から見れば、市になることをきっかけにお金が出ていく構図には変わりありません。現状で本当に人件費が安いと思っているのなら、市になる、ならないにかかわらず住民の意向を問うべきです。

<5万人達成後の人口政策は・・・急激に増やしたツケが後の世代に回る心配はないか>

あわてて5万人に増やして、その後、人口増加が続かずに反落が起こると、学校などの施設は余る、住民の負担は増えるという問題が起こります。住宅開発、工場誘致をやり続けるとしても、町内の土地や自然には限りがあります。新興住宅地は必ずオールドタウン化します。ヨーロッパ先進国の都市のように持続的発展をめざして、成長のコントロールという考え方を入れていく時期ではないでしょうか。

行政は、「人口減少の時代に入るが、職住近在を念頭にハードとソフトのバランスとれた施策を進める。人口政策は総合計画の重要な項目なので具体的に検討する。」とのこと。

<住民との意見交換や、意向把握はどのようになされるのか>

行政の答弁は、「住民のコンセンサスを得ることは重要。総合計画の策定スケジュールにあわせて、住民アンケート調査、住民説明会や出前講座で意向を把握しながら進める。」とのこと。

 

 

B三丁公園の整備事業の今後・・・公園づくりは住民参加で

 

藤江三丁公園の用地買収が進んでいます。どんな計画になるのか、今後の進め方について質問しました。

<今後のスケジュールと事業委託業者の選定方法は>

設計・施工は於大公園で実績のある都市再生機構(旧住都公団)に委託し、平成26年完成を目指すとのこと。

<計画のコンセプトは・・・どんな公園にするのか>

地形を生かした安全で緑豊かな安らぎの拠点(丘の広場、花畑)、年齢や体力の違いに関わらず誰もがレクレーションを楽しめる健康づくりの拠点(健康遊具、多目的広場、散策路)、災害時の安全性と機能性を備えた地区の避難拠点(管理棟、備蓄倉庫、耐震性貯水槽)の3点が基本になるとのこと。

<住民の憩える公園にするための工夫は・・・計画づくりへの住民の参加は>

三丁公園では、平成20年度から地元、高齢者、児童、生徒などの幅広い層が参画する公園づくり検討会を開催し、施設配置の計画や住民協働による運営維持管理のプランを検討してもらい、愛着の持てる公園にしたいとのこと。

住民参加は地区や各種団体の役員などの当て職ではなく、公園を利用したい人、関心のある人の参加を広く募り、計画段階から住民と行政の協働作業で進めるべきだと思います。

なぜ住民参加が必要なのでしょうか?・・・主権者であり利用者でもある住民が主役であるのは言うまでもないことです。瓢箪から駒の良いアイディアが出てくる可能性もあります。もし、参加がなければ(関心がなければ)その事業は不要不急と解釈できる「事前評価」の機能も備えていると思います。また、自ら主体的にかかわれば、愛着を持って大事に使ってもらえるはずだと思います。

<規制から活用へ>

公園などの利用はこれまで規制が中心でした。これからは木登りやボール投げ、落ち葉で焼き芋など、従来禁止されていたことも地域の合意を作りながら可能にしていくべきではと提言しました。

 

 

議案審議

 

 

[条例]

@自治功労者表彰条例の一部改正(長期勤続町職員を対象から除外)

A部制条例の一部改正(収入役を廃止、コミュニティ課と公園緑地課を新設、企画課に市制準備室を設置)

B私債権の管理に関する条例の制定(町債権(滞納など)の管理に関する規定を整備)

Cふるさとづくり基金条例の制定(使途に指定のない寄付をプールし有効活用するための基金を創設)

D土地開発基金条例の一部改正(語句の整理)

E町営住宅整備基金条例の廃止(必要性がなくなったため廃止)

F手数料条例の一部改正(子育て支援ヘルパー派遣手数料を規定)

G子ども医療費支給条例の一部改正(中学生までの入院費に加え、小学生までの通院費を無料化)

H母子家庭等医療費支給条例の一部改正(老人保健法、子ども医療費支給条例の改正に伴う語句の変更)

I障害者医療費支給条例の一部改正(老人保健法、子ども医療費支給条例の改正に伴う語句の変更)

J精神障害者医療費支給条例の制定(制度を明確化するために条例化)

K後期高齢者医療に関する条例の制定(新年度から始まる後期高齢者医療事務に必要な事項を規定)

L老人医療費の助成に関する条例の廃止(後期高齢者医療制度の開始に伴い老人医療費助成を廃止)

M霊柩自動車使用条例の全部改正(車両が廃止、外部委託となるのに合わせて利用規定を整備)

N国民健康保険条例の一部改正(葬祭費支給を7万円から5万円に減額)

O国民健康保険税条例の一部改正(地方税法の改正に伴い税率を変更、後期高齢者医療分を確保)

P地区計画の区域内における建築物の制限に関する条例の制定(地区計画区域ごとの建築制限を規定)

Q町営住宅条例の一部改正(森岡半ノ木住宅の新設と緒川住宅・生路住宅の廃止)

R水道事業の設置等に関する条例の一部改正(給水人口を55,000人、1日最大給水量を22,1003に変更)

S町議会政務調査費の交付に関する条例の一部改正(政務調査費の使途を例示し、ルールを明確化)

 

Cのふるさとづくり基金条例は、町内外の東浦に関心のある方々からいただく寄付金を積み立てるための基金を創設するものです。私が12月議会で、使途に特に指定のない寄付金をいったんプールして本当にほしいものを買うよう提言したことが実現しました。

Fの子育て支援ヘルパー事業とは、母親が出産・病気等の事情で家事・育児が困難な世帯に対し、1時間当たり1,800円の委託費(利用者負担は180円)でヘルパーを派遣、家事育児の手助けをする新事業です。

Gで、7月から小学校卒業までの医療費が無料になります。大府市(中学校卒業まで無料)など周辺自治体との子育て支援競争が激化しています。町は当初、入院のようなとっさの出費をカバーする制度は必要だが、通院までタダでは医療の乱用を招くとの立場でした。しかし、医療費の無料化は、子育て世代にわかりやすく、転入の際の関心事にもなっているため、導入に踏み切りました。子ども医療費として年間約2億円(うち小学生通院費として約9千万円)を見込んでいます。

KNOは、国の医療制度に反対する共産党以外の賛成多数で可決、他は全会一致で可決しました。

 

 

[人事、町道認定、請負契約]

@副町長の選任(戸田宗明氏の退任に伴い、企画財政部長の荻須英夫氏が副町長に就任)

A固定資産評価審査委員の選任(長坂吉春氏の再任)

B固定資産評価員の選任(副町長荻須英夫氏の新任)

C町道路線の廃止(緒川植山地内、石浜飛山東開発地内、生路上坪釜土地改良地内)

D町道路線の変更(藤江守宮池地内「藤江線」ルート変更、緒川北鶴根工場開発地内)

E町道路線の認定(生路池上地内の農道、藤江三丁公園計画地内)

F北部中学校耐震等改修工事請負契約の締結(耐震補強、屋根・外壁改修,1395万円,アイシン開発)

G森岡小学校耐震改修工事請負契約の締結(校舎耐震補強,7192万円,東浦土建)

 

@〜Gのすべての議案を全会一致で可決しました。

 

 

[予算]

@平成19年度一般会計補正予算(減債基金積立、退職金、支出の確定による減額など)

A平成19年度国民健康保険事業特別会計補正予算(療養諸費や拠出金の確定)

B平成19年度土地取得特別会計補正予算(土地開発基金利子の計上)

C平成19年度老人保健特別会計補正予算(医療給付費の確定)

D平成19年度下水道事業特別会計補正予算(使用料の増収、工事費等の確定など)

E平成19年度緒川駅東土地区画整理事業特別会計補正予算(保留地売却残、工事費等の確定など)

F平成20年度一般会計予算            (138億円)

G平成20年度国民健康保険事業特別会計予算     (43億円)

H平成20年度土地取得特別会計予算       (1,177万円)

I平成20年度老人保健特別会計予算        (2.9億円)

J平成20年度後期高齢者医療特別会計予算     (3.4億円)

K平成20年度下水道事業特別会計予算        (24億円)

L平成20年度緒川駅東土地区画整理事業特別会計予算(3.9億円)

M平成20年度水道事業会計予算

 

役場幹部職の在任期間を調べてみると平成20年度(平成204月〜平成213月)予算を決定しました。一般会計は138億円、6つの特別会計(国民健康保険事業、土地取得、老人保健、後期高齢者医療、下水道事業、緒川駅東土地区画整理事業)は合わせて77億円、水道事業会計は原則独立採算の企業会計になっていて事業収益8.9億円と事業費用8.5億円を見込んでいます。

国の法律に従い、75歳以上の高齢者の医療を従来の保険制度から切り離して運営するための後期高齢者医療特別会計が新設されました。この会計は、町で収納した保険料を保険給付を行う県の広域連合へ納付する役目を持っています。それに伴い老人保健特別会計予算は昨年度の30億円から2.9億円と大幅に減少しました。

FGJは、共産党の反対があったものの賛成多数で可決。その他の予算案は全会一致で可決しました。

 

 

[請願・意見書]

@深刻な医師不足打開のための法制定を求める請願

A看護職員確保法の改正を求める請願

B国民健康保険に係る国庫負担金の減額算定措置に関する意見書

 

@ABともに共産党のみの賛成で不採択となりました。

 

 

人事異動

 

4月になると人事異動でバタバタします。せっかくその部署で仕事を覚えて自分のペースで仕事が出来そうになると、3年で異動です。これでは専門家は育たないし、担当者の能力を仕事で発揮することはできません。退職などがあると全体が芋づる式に動いてしまうからだそうですが、せめて5年は同じ所にいて欲しいものです。(右上表参照

 

 

道路特定財源とガソリン税暫定税率の行方

 

4月になって、ガソリンが安くなりました。国会ではまだ決着がつかないようです。私は、借金だらけになりながらこれからも道路をつくり続けようとする自民党の考えにも、ガソリンの超過税率を下げればみんなが喜ぶという民主党の考えにも、賛同しかねます。

道路特定財源は高度成長期の遺物だと思います。地方を旅行すると、とんでもない辺鄙なところに不釣り合いに立派な道路が活用されずにいるのをしばしば目にします。山奥の山を削り谷を埋めて、広い歩道付きの2車線道路、入口に壁画や彫刻のあしらわれた立派なトンネルや橋、建設費やこれからの維持費の無駄だけではなく、自然や景観まで破壊しています。これらは国土に刻まれた痛ましい傷跡です。ほかにやるべきことはたくさんあるはずです。

一方、ガソリン税の暫定税率を下げれば確かにガソリンは安くなるのでしょうが、ただでさえ、地球温暖化の問題や石油資源の枯渇問題で世界中が頭を抱えている時に、ガソリンの消費をあおるような政策を持ち出すのは疑問です。ヨーロッパ先進国などでは環境税をかけてガソリンの値段を高くしているくらいです。ガソリン税で道路を造り、さらにガソリンの消費をあおっている日本は、環境政策に逆行しているとも言えます。

私は、ガソリン税は高い税率を維持し、その税収は福祉や環境政策に充てるべきだと思いますが、皆さんはいかがお考えでしょうか。

 

 

これはあくまでも私個人の目から見た議会活動報告です。意見・考え方を異にする方も居られるのは当然のことと思います。ご意見、ご批判、ご要望、アドバイス等何なりとお気軽にお寄せください。

6月定例議会本会議の開催予定は6月4(水),5(木),6(金),9(月),18(水)の5回で、いずれも朝9時30分からです。4は議案の上程と説明、5・6は一般質問、9は議案の質疑、18は討論・採決です。11(水)〜13(金)には常任委員会が予定されています。

 

平成20年4月21日

 

神谷明彦

E-mail kamiya-a@mbk.nifty.com

 

 

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