神谷明彦の9月定例議会報告 (第34号)
9月定例議会本会議は9月6(木),7(金),10(月),11(火),26(水)の5回開かれました。このうち、6は議案の上程と説明、7・10は一般質問、11は議案の質疑、26は討論・採決でした。本会議で上程された議案は3つの常任委員会に分割付託され審査の後に、本会議最終日に採決されました。
今回は町内に残った2ヵ所の里山をめぐる質問をしました。一つは町内最大規模の石浜飛山東地区の雑木林が宅地開発の危機に直面していることについて、もう一つは緒川舟木の新池周辺の山林で計画されている(仮称)自然環境学習の森の整備方針についてです。
@石浜飛山東地区の宅地開発計画について
石浜飛山東地区でいったん頓挫した宅地開発計画が再び進められています。民間の宅地開発業者が山林を買収して約19haの宅地開発をする計画です。
私は、以前から述べていますが、水の循環、生態系、景観面からも、里山として保全していくには、ある程度の厚みがあり2つ以上の尾根にはさまれた谷を残さねば意味がありません。そんな手付かずのまとまった規模の里山は町内でここしか残っていません。
宅地開発が地権者の総意であれば仕方のないことですが、何とかして町内最大最後の里山を残せないものでしょうか。万一開発されるとしても、従来型の開発とは違い、樹林地の自然を生かした住宅地にできないでしょうか。
平成17年に、町が緑の基本計画、都市計画マスタープランを改定したときに、この地区については「自然内住宅検討地」という表現を用いて、従来の宅地誘導と差別化を図ったはずですが、それがどんな形で盛り込まれるのか全く不明です。建設部長の答弁では「ゆとりと潤いのある住宅居住空間実現のためには開発を許容する。公園や緑地面積は規制以上に確保する」と言っていますが、今回の計画は樹木を伐採し地面をならし、狭い分譲区画に区切り、碁盤の目のように道路を入れる従来型の宅地開発となんら変わりありません。「緑地」と一言で言っても、街路樹や公園広場をつくるのと雑木林の自然を残すのとでは意味が違います。送電鉄塔の下に樹木を残すといっても自然を残したことにはなりません。町の言う「自然内住宅」とは「自然無い住宅」の意味でしょうか? 町は定まったイメージを持ち合わせていません。
いたずらに高度成長期の開発手法を繰り返し、それでもって都市景観が悪い、潤いがないというのはあたりまえです。何でもいいから適当に開発しちまえでは、里山も浮かばれません。
今、「持続ある発展」が求められています。急に人口を増やせばそのあと必ず歪みが出ます。最後に残った大規模山林を開発してしまった場合、どのような持続的発展を考えるでしょうか。私たちは次の世代に、開発の歪みを残すことなく、東浦の自然や景観を残していく責任を負っています。これについては、将来の人口計画の考え方や、これからの開発はどんな場所で進めるべきかなどに踏み込んで議論するつもりでしたが、時間切れになってしまいました。
<「自然内住宅」と聞いてイメージするものは>
たとえば、林の中に散在する住宅、地形に沿った区画や道路・・・まるで高原の別荘地ですね。高低差を生かせば建築に個性が出ます。盛ったり削ったりしなければ、地震や土砂災害にも強いはずです。そこまでできなくても、国の優良田園住宅制度のように建蔽率を(従来の半分に)制限したり、林や家庭菜園つきの区画にしたりすれば、かなりゆとりが出ます。
これは決して不可能ではないと思います。宅地開発業者は3〜4万/坪で山林を購入、開発して30〜40万で売るわけですから、減歩があるにせよ単価は約10倍になります。この利益を土地利用制限付で購入者と開発者と地権者が分け合えばよいのです。
“環境共生型まちづくり”の実例として、滋賀県近江八幡市の「小舟木エコ村プロジェクト」では農地15haを開発し、家庭菜園つき住宅、平均73坪、40区画が90坪以上を実現しています。
A「自然環境学習の森」の整備方針について
工場敷地にかからずに残った新池周辺の山林を県が主体となって(仮称)自然環境学習の森として整備する計画が発表されました。町が地権者である名鉄と豊田自動織機から13haの山林(保安林)を借地し、林野庁の予算1億円を使って、治山事業として3年間で県が整備。そのあと町が学習施設設置や維持管理をする計画です。
<民有地で行政が治山事業?>
まず、民間の土地を賃借して、税金でもって治山事業をするわけですが、本来は荒廃した山林を再生して管理しなければならないのは地権者のはずです。実際に町内の地主さんで、毎年少しずつお金をかけながら、竹林を整備している人だっています。市民の森を創ることに反対ではありませんが、ここで税金を投入し治山事業をやることについては、説明が必要です。
これに対して、町長は、「環境庁には里山保護の支援策はなく、林野庁が治山事業としてお金を出してくれることになった。あくまでも自然環境を守るための取り組みで、治山が目的ではない。」と答弁しました。
<1億円かけて3年で自然再生は不自然>
町が里山再生に向けて重い腰を上げたのは結構なことですが、里山の保全や手入れは、お金をかけて大がかりな土木工事をするのではなく、時間をかけて自然を育てていく過程が大切だと思います。生物が定着するにも年月を要します。里山は逃げていきません。あわてて1億円も投入する必要はあるのでしょうか。国のお金といっても元は住民の税金です。
答弁では「少々の人手では手がつけられないので初期整備が必要。竹林から広葉樹林への転換、最小限の管理用道路、作業用スペース、一定の面積の湿地帯と小川を造成、木道設置をする。地形の改変は最低限にする。その後の管理も含め10年、20年かけて里山を再生したい。」とのこと。
<区域は十分か>
区域は、尾根の半分、谷の半分しかありません。また、谷の最奥(源流部)が入っていません。本来は一つの谷(水系)全部をカバーすべきです。谷の東側にある斜面がはだけていて宗教施設が丸見えなのも景観を損ねています。借地予定の2社以外とは用地交渉していないでは片手落ちです。これに対する答弁は「今後の課題」とのこと。
<その後の維持管理は>
町が里山を管理していく上で、さまざまな形の市民参加、人づくりのための講習、保全活動の実践などをどう進めていくのでしょうか。どんなプログラムを考えているのでしょうか。
愛知県内には、自然とのふれあいや保全活動をサポートする機関があります。里山保全活動をしている市民団体もたくさんあります。東浦から職員や住民がそういったものに参加することもできるし、参考になるものもいっぱいあるはずです。
森づくりは、本来市民の手で、自然と親しみながら遊びながら育んでいくものだと思います。行政が事業内容も期間も決めてしまって、あとは管理の作業員として住民を使う発想ではダメ。計画段階から住民が入るのが住民参加です。行政はコーディネート役に徹するべきです。
建設部長は「どう住民を取り込むのか、今後勉強する。」との答弁でした。
[条例・補正予算・その他]
@教育委員の選任(笠松千枝子氏の後任に小林久枝氏)
A政治倫理の確立のための東浦町長の資産等の公開に関する条例の一部改正(郵政民営化に伴う語句の変更)
B公文書公開条例の一部改正(郵政民営化に伴う語句の変更)
C職員の給与に関する条例の一部改正(郵政民営化に伴う語句の変更)
D道路占用料条例の一部改正(郵政民営化に伴う語句の変更)
E都市下水路条例の一部改正(郵政民営化に伴う語句の変更)
F職員の退職手当に関する条例の一部改正(雇用保険法の改正に伴う語句の変更)
G児童遊園及びちびっ子広場に関する条例の一部改正(藤江荒子西ちびっ子広場の新設)
H旅館等の建築の規制に関する条例の一部改正(学校教育法の改正に伴う語句の変更)
I町営住宅条例の一部改正(九俵池住宅の一部廃止)
J知多中部広域事務組合規約の一部改正(交通災害共済事業の廃止に伴う語句の整理)
K知多中部広域事務組合交通災害共済事業の廃止に伴う財産処分に関する協議(交通災害共済事業の廃止に伴う残余財産の清算)
L民間宅地開発事業に伴う字の区域の設定及び変更(緒川鰻池、東米田、葭挟間の一部を「相生の丘」に改称)
M町道路線の廃止と変更(石浜工業団地計画地内)
N町道路線の認定(藤江荒子宅地開発地内)
O平成19年度一般会計補正予算(法人町民税収入の上方修正、乾坤院土地購入を取止めて三丁公園用地費に振り替え、35人学校に対応し東浦中学校の増築設計など)
P平成19年度国民健康保険事業特別会計補正予算(前年度繰越金の増)
Q平成19年度土地取得特別会計補正予算(土地開発基金利子増加分を基金に繰出し)
R平成19年度下水道事業特別会計補正予算(特定都市下水道計画の策定委託費)
S平成19年度緒川駅東土地区画整理事業特別会計補正予算(繰越増と新規借入の減額)
JKは、知多中部広域事務組合(広域消防)で行っていた交通災害共済事業を今年度末で廃止し、残余財産を構成市町で清算するためのものです。民間の傷害保険や自動車保険が普及し、近年加入者が減り続けており、役割を終えたと判断しました。
Lは、緒川の鰻池と東米田にまたがる農地約5haを宅地開発し分譲するにあたって、字の地名を「相生の丘」とするものです。「池」や「田」が、いきなり「丘」に変わってしまうわけですが、地名はその場所の地形、歴史、文化などを代表するだけに、安易な変更を避けるためにも一定のルールが必要だと思います。
上記の議案は全会一致で可決されました。
[決算認定]
@平成18年度一般会計決算
A平成18年度特別会計決算
B平成18年度水道事業会計決算
平成18年度(平成18年4月〜平成19年3月)予算が適正に執行されたかどうかを、決算書に沿ってチェックします。決算書には一般会計126億円と5つの特別会計(国民健康保険事業、土地取得、老人保健、下水道事業、緒川駅東土地区画整理事業)90億円、合計216億円もの使途が科目毎に記載されています。採決の結果、一般会計と国民健康保険事業特別会計、老人保健特別会計は、共産党を除く賛成多数で認定可決、他の決算案は全会一致で認定可決されました。
決算審議で私は、滞納対策や給食食材の安全性について質問しました。
<滞納対策>
町税から国保税、はては保育料や給食費まで、滞納が問題になっています。滞納の原因はさまざまなようですが、多重債務も一因です。神奈川県や芦屋市では、サラ金業者が借主から違法に取っていた過払い利息に目をつけ、これを差し押さえて、サラ金業者から借主の滞納分を回収する手法を取り入れています。滞納整理と多重債務が一挙に解決できれば一石二鳥ではないでしょうか。
<給食の食材は>
近年、食の安全性やフードマイルの観点から国産や地元産に関心が集まっています。給食センターでは地元産や県内産、国内産を優先して使用しますが、生にんにく、干ししいたけのような価格差が大きいものについては、中国産を使用しているそうです。加工食品ではさらに材料の特定が困難です。加工食品の納入にあたっては残留農薬テスト済みの証明書を要求しているそうです。
※フードマイル:食料の輸送距離が長くなるほど環境負荷が大きくなるという地産地消と同様の考え方
[請願・意見書]
@学級規模の縮小と次期定数改善計画を求める請願
A市町村独自の私学助成の拡充を求める請願
B学級規模の縮小と次期定数改善計画の実施を求める意見書
C国の私学助成の増額と拡充に関する意見書
D愛知県の私学助成の増額と拡充に関する意見書
E地方の道路整備の促進と財源の確保に関する意見書
F割賦販売法の抜本的改正に関する意見書
G「非核日本宣言」を求める意見書
@Bは毎年、東浦の教職員組合から要請が来るもの。ACDは私学をよくする愛知父母懇談会から。Eは国・県から道路財源を温存するために意見書を出すように市町村に圧力が掛かっているもの。毎年慣例で議案になっているものが目立ちます。
Gは共産党のみの賛成で否決。他は全会一致で可決されました。
私は今、公募で、愛・地球博跡地に公園を計画するワークショップに参加しています。計画地は韓国館やインド館などアジアのパビリオンがあった辺りの約2ha。9月から4回シリーズで、グループに分かれて公園の構想を練ります。県の職員とコンサルの人がコーディネート役です。
できるだけ自由なアイディアを出せるよう、テーマや予算額など先入観となるものは与えられていません。県も計画段階からの住民参加に本腰を入れるようになったと感じます。
「第2回 ため池シンポジウム in あいち」が9月15・16日に、美浜町の日本福祉大学で開催されました。昨年、ため池の数全国一の兵庫県で開かれた第1回「ため池シンポジウム」の理念を引き継ぎ、ため池の多面的な価値、ため池に生息する生き物、歴史・文化、地域コミュニティとの関係などについて活動報告や意見交換が行われました。
私は、「知多半島・東浦町におけるため池(厄松池、切池、飛山池)と里山を守るために」と題して分科会で報告をしました。実行委員の方がたまたま私のホームページを見たのがご縁で頼まれました。わずか15分間の発表でしたが、図や写真をふんだんに使い、質疑応答も内容の濃いものになりました。
県が「愛知県ため池保全構想」を定め、各市町村に各々のため池の性質に応じた「ため池保全計画」の策定を求めるなど、ため池を取り巻く環境も保全に向けて少しずつ変わってきているようです。
例年のように、生路小学校の5年生のクラスでため池の環境をテーマに講師を務めます。授業のあと池の未来像を描いてもらう宿題を出して、それから、実際にボランティアで厄松池の掃除をする予定です。
厄松池の掃除は、11月11日(日)9:30から厄松公園集合にしたいと思います。飛び入り大歓迎ですので、大人の皆さんも是非ご参加ください。
これはあくまでも私個人の目から見た議会活動報告です。意見・考え方を異にする方も居られるのは当然のことと思います。ご意見、ご批判、ご要望、アドバイス等何なりとお気軽にお寄せください。
12月定例議会本会議の開催予定は12月7(金),10(月),11(火),12(水),21(金)の5回で、いずれも朝9時30分からです。7は議案の上程と説明、10・11は一般質問、12は議案の質疑、21は討論・採決です。
平成19年10月22日
神谷明彦
E-mail kamiya-a@mbk.nifty.com
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