神谷明彦の6月定例議会報告 (第33号)

顔写真 

選挙後、議会会派の構成は、親和会11+公明党2+共産党3+蒼志会3の計19名となり、最大会派の親和会(自民党)が過半数を占めることになりました。私はどこの政党にも所属していませんが、齋吉男議員、平林由仁議員とともに無所属議員3人が集まって蒼志会という会派をつくっています。

5月には、正副議長や各委員会のメンバーの改選がありました。東浦町議会には、役所の機構に合わせて総務委員会、文教厚生委員、経済建設委員会の3つの常任委員会があります。私はその内の文教厚生委員会に所属することになりました。本会議の根回し会議である議会運営委員会へは引き続き私が会派の代表者として出席しています。広域行政への代表としては、東部知多衛生組合の議員を務めることになりました。(消防やゴミ処理など、単独の市町村では手に余るようなことをいくつかの自治体が人や分担金を出し合って広域で行っています。執行責任者は構成市町の首長です。当然そこには議会もあります。)

 

東浦町がかかわっている広域行政

 

6月定例議会本会議は6月6(水),7(木),8(金),11(月),20(水)の5回開かれました。このうち、6は議案の説明、7・8は一般質問、11は議案の質疑、20は討論・採決でした。本会議で上程された議案は3つの常任委員会に分割付託され審査の後に、本会議最終日に採決されることになっています。

 

 

一般質問

 

 

@政治と民主主義に関する教育の充実を

・・・いかにして自ら考え、議論できる「市民」を育てるか

 

選挙の投票率は長期下落傾向、若い世代ほど政治に無関心といわれています。結果、年金問題や雇用問題で若者が政治的弱者になっています。新聞紙上では、憲法改正や国民投票法案が記事をにぎわせています。中国大陸での歴史認識の問題はいまだに尾を引いています。

そんな中で、小中学校での、政治、社会、民主主義に関する教育はどのようになされているのでしょうか。民主主義を理解すること、社会や政治に興味を持つことは、将来を担う社会人を育てる上で重要です。しかし、教育現場では、偏向の批判を恐れるあまり政治教育に消極的になっていないでしょうか。一つの問題について多方面からの見方を紹介し、教師が答えを提供せずに子どもたちに考えさせる授業が必要と考えます。

民主政治については、小6と中3の社会で学ぶし、総合学習で取り上げることもできると言いますが、そもそも、民主主義の歴史や原理が教育されていません。大人も含めて多くの人が「民主主義=多数決」くらいにしか思っていないのではないでしょうか。西欧型民主主義を理解しようとするとバックにある社会契約説に対する理解が必要です。

リクルート出身で杉並区立和田中学校校長として活躍されている藤原和博さんも、著書に「日本は情報処理力の高いサラリーマンは育てたけれども、自分の頭で考え自治を行う市民は育て切れなかった。自分が払っている税金や年金のこともよくわからないし、地域社会を形作る教育や介護やまちづくりの現場に積極的に参加もしない。文句は言うが対案を作り自ら実現に向かって責任を分担することを避けるそんな住民を作ってきた。これでは成熟社会を生きる市民の態度とは程遠い。」と日本の教育を見て痛烈に批判しています。まさにその通りです。お任せ民主主義から脱却して一人前の市民をつくるためにも、もっと意識的に民主主義教育をすべきだと思います。

もう一つ大事なことは、自分で調べて、自分で考え、他人と議論する習慣です。我々のころよりは授業に取り入れられているとは思いますが、残念ながら、小学校高学年のグループ討論などを見ていると議論が非常に苦手です。論理立った説得力のある意見を言えません。あらかじめお膳立てしてメモに書いてあることを読んで終わり。ガチンコの意見交換はありません。大人の顔色を伺いながら想定されるような答えを言う傾向があります。何が問題なのでしょうか?

最近、国際化ということが盛んに言われるようになって来ました。自分の意見が言えないのでは外国人とコミュニケーションをとることは出来ません。私は恥ずかしながら今、英会話を習っています。アメリカ人などはイラク戦争、靖国問題のような答えにくいことも、反対か?賛成か?理由は?と平気で聞いてきます。自分の意見をもてない、言えないのでは相手にされません。身内ではないのですから以心伝心では伝わりません。これは外国語が話せる話せない以前の問題です。筋道立った議論をする訓練は、小学校からあわてて英語を覚えるよりも大切なことかもしれません。ディベート(相反する意見を持つ人の身になって考え、相手を論理的に納得させる練習)も必要かもしれません。

教育長の答弁では、「新聞の時事問題、歴史の学習、生徒会の集会などいろんな機会を捉えて、民主政治についての理解を深めるようにしたい」。指導主事の先生の答弁では、「討論のテーマが子どもたちの身近なものになっていないのと、聞いたり話したりする技術が未熟なのは事実。モラルジレンマ(こちらを立てればあちらが立たなくなるような道徳問題)などを題材とした討論型の授業の積み重ねが必要。」との見解でした。

 

 

A文書管理システムの整備

 

導入予定の文書管理システムの整備の内容と考え方について以下の観点から質問をしました。

(1)整備のスケジュールと概要

(2)整理・整頓の観点

(3)情報保管、情報検索の観点

(4)前任者からの業務の引継ぎはどのようになされるか

(5)住民への情報公開の観点

 

行政は、19年度に業者を選定し、2010月から稼動、文書の起案・収受・廃棄までパソコンで管理できるようにしたいと言っています。これにより、文書の履歴確認、決済状況確認が容易になり、電子決済によりペーパーレス化が可能となります。情報の共有、引継ぎ・廃棄、文書目録で検索が容易になり、情報公開にも資するとしています。行政は、従来の紙データを使用しながら、新しい文書から徐々に電磁データに移行していくつもりです。

北海道のニセコ町では、新しい文書は役場の担当課で、3年以上を経た文書は学習交流センターの書架で、ホームページでは文書の目録を検索可能にして、住民がいつでも見られるようになっています。ニセコ町はすべての情報を公開、住民と共有しています。東浦町は「過度な公開は混乱を招く」として公開に消極的ですが、文書管理システムは情報公開の有効なツールとして活用すべきです。

行政の答弁は、「条例、規則の許す限り情報公開する。ホームページでの公開はシステムが定着した後に考えている。先進例を参考にしたい」とのこと。

 

 

B明徳寺川沿いの景観保全

 

東浦町では、何年もかけて、明徳寺川沿いに於大の道をつくり、500本の桜を植え、散策できるようにし、於大公園や乾坤院と結び、於大まつりにも使えるように整備してきました。また、(仮称)自然環境学習の森にも続く立地になっています。

これらの景観をどう位置づけ、どう守っていくのでしょうか。景観条例などの制定は考えているのでしょうか。

私は8年前に議員になったときに里山の保全について質問しました。当時は関心が薄かったですが、今では(少なくとも言葉の上だけでは)保全していこうという雰囲気に変わってきたと感じます。私が次に訴えていきたいのは景観のことです。これまで日本は経済一辺倒でがんばってきました。それが一服ついて落ち着いた先進国に仲間入りしたのですから、これからは、都市景観・田園景観・歴史景観を考えていくべき時期に来ています。平成15年に国土交通省が定めた「美しい国づくり政策大綱」(http://www.mlit.go.jp/keikan/taiko_text/taikou.html)には、これまでの反省がこめられています。そして、景観法が制定され、これからはたたずまいを考えていかないといけないという流れになってきました。

そんな中で今回、一般質問で景観を取り上げることにした直接のきっかけは、於大の道沿いに建築物が予定されている件に絡んで、20代の方から投書(電子メール)をいただいたからです。行政はこの場所の景観形成に力を入れてきたはずなのに無為無策で良いのかと、丁寧な文章で書いてありました。この件に関しては、現時点で法律上どうにもならないのはわかっていますが、行政が関心を持っているのとそうでないのとではおのずと異なります。行政の景観に対する想いを聞いてみました。

建設部長の答弁では、「緑の基本計画で緑化重点地区に指定、於大の道を核に自然環境学習の森と緑のネットワークでつなぎ景観を充実したい。しかし、景観条例等の制定については土地利用に制約が加わるため考えていない。これから勉強しながら景観問題に取り組んでいきたい」とのこと。

いずれにせよ、行政の姿勢が大事です。私権が絡んでいきなり規制は出来ないというなら、少なくともいろんな方法で景観に対する住民、地権者の興味・関心を喚起していく必要があると思います。たとえば、長久手町のように景観法にのっとり景観策定委員会を作っているところもあります。住民の参加を募って景観に対するひとつの意識を作っていってはどうでしょうか。

 

 

Cバリアフリーの街づくり

 

公共施設や道路のバリアフリーはどのように設計されているのでしょうか。すべての人に優しい規格は存在しないと思います。ある人にとっては段差がないとスロープが認識できないし、また、ある人にとっては小さな段差がバリアになることもあります。当事者が参加して、意見をすり合わせながら設計していく仕組みを取り入れてはどうでしょうか。

行政は基準どおりに設計しているとか、各種団体の代表者で意見交換会(年1回)を開いているとか言いますが、問題は計画段階から当事者が関わっているかどうかです。東浦町は傾向として、既に決まったこと出来上がったものを見せて各種団体の代表から一応意見を聞き置いておけば住民参加は事足れりという姿勢があります。

計画の最初の段階から参加を募る流れを作るべきです。日進市も新しい公共施設を作るときには障がい者などの参加を募って話し合いながらやっています。

 

 

議案審議

 

[条例・補正予算・その他]

@都市計画税条例の一部改正(地方税法の改正に伴う語句の変更)

A戦傷病者医療費支給条例の廃止(該当者がいないため県条例の廃止を機に廃止)

B老人医療費の助成に関する条例の一部改正(戦傷病者医療費支給条例の廃止に伴う語句の変更)

C児童遊園及びちびっ子広場に関する条例の一部改正(生路前田南ちびっこ広場の新設)

D消防団員等公務災害補償条例の一部改正(政令の改正に伴い、保障基礎額を引き上げ)

E町道路線の認定(生路前田宅地開発地内および生路折戸宅地開発地内)

F平成19年度一般会計補正予算(障害者自立支援の補助金、教育費委託金、個人の寄付など)

G平成19年度下水道事業特別会計補正予算(森岡・藤江ポンプ場に約20億円の債務負担行為)

H平成19年度老人保健特別会計補正予算の専決処分の承認(5800万円を前年度へ繰上充用)

I森岡ポンプ場の建設工事委託協定の締結(208000万円,日本下水道事業団)

J藤江ポンプ場の増設工事委託協定の締結(15100万円,日本下水道事業団)

K原爆症認定基準の抜本的改善を求める意見書

 

Fでは、県から「命を大切にする心を育む教育推進事業委託金」「心をむすぶ学校づくり推進事業委託金」など小中学校教育向けに6種類の教育費委託金が合わせて2百万円ほど出ています。この手の委託金は、使途を細かく区分せずに一括で市町村に渡したほうが使い勝手が良いはずです。県は、もっと現場を信用してはどうかと思います。

Gの債務負担行為とは、数年次にわたる大きな工事請負契約を締結する場合に、将来の支出を約束する行為です。今回の場合は、19年から22年度にかけて19.8億円の支出予定額を定めるものです。

Hの専決処分とは、議会を招集する時間的余裕がないとか議会が成立しないなどの理由で、必要な期限までに議決ができない場合に、首長が議会に代わってこれを処分することです。解り易く言えば、急ぎの案件を行政が議会の議決を経ずに執行してしまうことで、議会の事後承認を諮ることが必要になります。この場合、承認を得られなかったとしても専決処分の法的効力は変わりません。従って、止むを得ない場合以外の多用はあってはなりません。

IJは日本下水道事業団との随意契約です。実際の施工業者は事業団の入札により決められることになります。緑資源機構などの特殊法人の不祥事が問題になっています。入札はフェアーに行われるのか、事業団にマージンを取られるだけではないか、心配です。行政の説明によれば、日本下水道事業団は今では地方自治体の100%出資に変わっており、下水設備に高度な専門性を持つ設計施工コンサルタントとして欠かせない存在とのことです。

Kは共産党のみの賛成で否決、その他の議案は全会一致で可決されました。

 

 

第2次 議会の制度・運営に関する検討委員会

 

改選後の新メンバーで第2次委員会が発足しました。委員は、正副議長と各会派の代表者計6人で構成されており、私も入っています。

前期に引き続き、開かれた議会、議員の政策形成能力の向上、議会のあるべき姿を議会基本条例にまとめることなどをめざしていきたいと思っています。さっそく8月には、東海地方初の議会基本条例(http://www.city.iga.lg.jp/ctg/57079/57079.html)を制定した三重県伊賀市を訪ねることになりました。伊賀市の議会基本条例では、一般質問で市側が議員に逆質問できる「反問権」や、市民の要請に応じて各委員会が議案の審査経過を出向いて説明する「出前講座」の設置などを盛り込んでいます。

 

 

市になるということ、発展とは、豊かさとは

 

東浦町は、次の国勢調査までに人口5万人を越えて、市制施行をめざすと行政は言っています。しかし市になることにどれほどの意味があるのでしょうか。よく考えてみる必要があります。市になることイコール発展。どんどん人口を増やして、10万都市になり、やがては都会になってみんなハッピー。これは20世紀(高度成長期)の発想です。

大事なことは、住民が豊かな暮らしを送ることです。豊かさの定義は人により時によりまちまちでしょうが、住むことを考えれば、体裁や、便利さだけでなく、治安の良さや、自然豊かな環境の中でゆったりと落ち着いた日々を送ることも含まれます。混雑することに喜びを感じる人はあまりいないと思います。

行政として市になるメリットとしては、県の知多事務所を経由せず県庁と直接事務のやりとりができること、市長会など市同士の付き合いで情報交換ができること、市役所になって市の職員の士気が上がること、職員の採用が有利になることなどが挙げられます。しかし、同じ人口の市と町村を比べると、財政規模が大きくなる傾向があります。市への看板の掛け替えにも費用がかかります。職員の給料や議員の報酬を市並みに上げるとなればかなりの出費になります。その資金(税金)は自前で調達しなければなりません。

住所を書くときにちょっとした優越感を味わうのを楽しみにしている方もいらっしゃるかもしれません。そのほかに自分にとってどんなメリットがあるか一度考えてみてはいかがでしょうか?

 

 

これはあくまでも私個人の目から見た議会活動報告です。私の考えをできるだけ率直に述べたつもりです。意見・考え方を異にする方も居られるのは当然のことと思います。ご意見、ご批判、ご要望、アドバイス等何なりとお気軽にお寄せください。

9月定例議会本会議の開催予定は9月6(木),7(金),10(月),11(火),26(水)の5回で、いずれも朝9時30分からです。6は議案の上程と説明、7・10は一般質問、11は議案の質疑、26は討論・採決です。9月定例議会では18年度の決算を審議します。PlanDoCheckActionのマネジメントサイクルの中で、今まで行政は、PlanDoPlanDo→しかしてきませんでした。これからは、決算時にこれまでしてきたことをキチンとチェックして、改善策を講じたうえで次の予算に生かすことが求められています。

 

平成19年7月10日

 

神谷明彦

E-mail kamiya-a@mbk.nifty.com

 

 

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