平成18年6月定例議会報告  (第29号)

 

6月定例議会が終了しましたので議会報告を致します。本会議は6月7(水),8(木),16(金)と3回開かれました。このうち、7・8は主に一般質問、8の後半は議案の説明・質疑、16は討論・採決でした。

 

 

一般質問

 

 

@教育について

 

学校教育においては、ゆとり教育の導入に伴い、様々な試みがなされてきました。一方で、ゆとり教育に対する批判も起こっており、「ゆとり」見直しと思える動きも出てきています。教育のあり方には様々な立場、様々な意見があり、何が正しいのか一概に判断することは困難です。

しかし、少なくともある目標を設定して、行われた改革について、結果を検証し、次の対策に結びつける努力は必要です。そんな観点から、平成13年度に小中学校で導入された絶対評価の効果をどう捉えているのか質問しました。

また、最近、学習塾があちこちに造られて、塾に通う子どもたちが増えてきているように感じます。塾へ行くのは、ゆとり教育で学校の授業だけでは不十分との認識が広がっているためか?子どもの成績の相対的位置を塾でしか確認できなくなったためか?そんな疑問をぶつけてみたかったです。義務教育に余分なお金が掛かるようでは、親の所得で教育格差が生じかねません。塾に行かずに済む初等教育はどうあるべきなのでしょうか?

文部科学省は、来年度から小6と中3全員を対象とした全国学力調査を計画しています。犬山市は、自ら学ぶ力は学力テストでは測定できない、全国一律の調査は地方の特色ある教育を阻害するなどとして、この調査に不参加を表明していますが、東浦町ではどう考えているのでしょうか?

 

小学1年の通知表(教科別5段階の相対評価から、観点別3段階の絶対評価に変わりました)

 

教育長の答弁では、「絶対評価は努力して目標に達した生徒が確実に評価される仕組み。絶対評価では、集団の中の順位を争うのではなく、個々人がどれだけ伸びたかを評価するため、習熟度別学習やチームティーチング等の個に応じた学習が可能となった。」とメリットを強調しています。しかし、厳然と存在する競争にフタを被せるのではなく、進学に対して相対的な位置が知りたい場合などには適宜相対評価を使い分けてはどうかと思います。

塾と学校の関係については、「通塾率が上昇している原因は、学校教育の低下にあるのではなく、保護者や児童生徒の教育への期待値が高まったためと考えている。」「初等教育は、知識技能の習得だけでなく、徳育、体育、食育も含め、人格の基礎形成を目指している。一方で、保護者が学歴主義にとらわれている面もある。学習指導要領に準拠した教育を誠実に行うとともに、高校受験や高等教育のあり方も含めた制度改革により国民の意識が変わる必要もある。」とのこと。

全国学力調査に関しては、「学力テストの結果を分析することで、教育の充実、質の保証につながると考えている。国語・算数、知識およびその活用、学習環境や意識に関する調査もあわせて行う。本町も参加する。」との答弁でした。

 

残念ながら、型どおり質問しただけで時間切れになってしまいました。言いたい事、ハッキリさせたいことは聞けずじまい。もう一度やらねばと思います。

私は、大学卒業の制度や就職の制度を変えない限り、教育課程や受験制度をいじっても受験競争の状況は変わらないと思います。

一方、教育の質に関しては色々な試みが出来ると思います。しかし、残念ながら、いろいろやっても成果が見えにくい。だから文部省も全国テストを始めることにしたのです。東浦町としても、感覚的に成果を論ずるのではなく、長期的視野に立って、本人や保護者にわかるような試行錯誤と検証の取り組みを期待します。

 

 

A転出者に広報誌を届けては

 

大学入学、就職などで転出する若者に、町の広報誌を届けるようにしてはどうでしょうか。郷土愛を感じでもらい、少しでもUターンのきっかけになればと思います。

東浦町の昨年度の転出者は、15〜19歳が79人、20〜24歳が269人で、3月に集中しています。東浦で生まれ育った若者の多くが郷里を離れていきます。世界で羽ばたいていただくのも結構ですが、学問を積んで、あるいは手に職をつけて、戻ってきて活躍していただければ嬉しいことです。何を隠そう私自身も転出組です。何の因果か戻ってきて、議会で質問するめぐり合わせになりました。

送料が多額になるならば、最初の一回のみを送付して希望をとる、新年号のみを送る、ネット配信するなどの工夫もあるのではないでしょうか。

答弁では「成人式の際に広報誌を配布するのもひとつの方法。広報をメール送信するなど他の方法も含め検討したい。」「転出用の封筒に町のホームページのアドレスや励ましの言葉を印刷しておくのもよいかも。ホームページには学校間の掲示板があり、遠隔地の転出者からも高い関心を寄せられている。」とのこと。

 

 

B飛山池周辺の里山の一体保全を

 

以前から飛山池周辺には自然公園構想がありました。私も過去何回か一般質問で取り上げたことがありますが、一向に進展しませんでした。しかし、17年度から町は用地の借地交渉に本腰を入れたようです。

そこで、借地契約の進捗状況と今後の自然公園整備の内容とスケジュールについて質問しました。またさらに、飛山池の周囲だけでなく、県道東浦名古屋線(通称ダンプ道路)東側の里山と一体で保全する考えについて質問しました。

行政の答弁は、「借地契約済みの面積は約2ha(予定面積の約40%)で、残りの部分についても今後借地を進める。」「樹林を出来る限り保全するようにした散策道や休憩所を検討したい。」とのこと。従来は公園整備と言えば施設建設の意識が強かったのですが、あるがままの自然の価値が見直されるようになってきたと感じます。

県道東側の里山の保存に関しては、行政は「都市計画マスタープランでは、自然環境への影響に配慮した住宅供給地と位置づけている」として、住宅開発をあきらめきれないようですが、以前持ち上がったU社とM社による開発計画は頓挫しています。

町内には、二つ以上の尾根があって、水源の雑木林や点在するため池や田畑などを含んだ「里山」が手付かずで残っているのはもうここだけ。大切に残していくべきです。マスタープランのなかでは「自然環境に配慮した住宅地」と位置づけていますが、現行の手法では従来型の開発となんら変わらないものにしかなりません。

開発しやすいところから安易に開発してきたために、日本全国で里山の消失が同時進行しています。そんなところは往々にして駅から遠い場合が多く交通も不便、治山治水上も問題があります。開発計画を期待するよりは保全に頭を切り替えてはどうかと思います。町が全部買収しても於大公園用地よりも安くあがるのでは?と思います。市民参加型の公募債で資金調達するのもひとつの手です。

借りた後の管理は。市民参加の手法が取れないでしょうか。里山管理のシステムを学ぶシンポジウム、講習会なども企画して欲しいところです。あいち小児医療センター脇の山林を手入れしているアチェメックの森の活動ノウハウを参考にしてはどうでしょうか。

資材置き場等で山林が失われたところについては、在来種を植林して里山を再生する必要もあります。

これは100年の計です。将来、周りに宅地や工場が出来てもここだけ都市のオアシスとして残ります。ニューヨークのセントラルパークはまちづくりの初期の段階から残してきたから今日の姿があります。日本はこういう発想が無さ過ぎます。面的な広がりを持った一団の里山を残す必要があると思います。

 

 

 

C多重債務者問題への対応は

 

消費者金融等の法外な金利が社会問題になっています。

国民の10人に1人がサラ金を利用し、返済困難に陥っている多重債務者は150万〜200万に上るといわれています。今議会には県司法書士会から陳情も出ています。町内にも困っている人たちがいるはずです。

予防や解決のための啓発やアドバイスはどうなっているのでしょうか。

過去の町の広報を見ても多重債務問題に触れていません。単に「法律相談」「消費生活相談」と案内するだけでは相談に行きづらいものです。「多重債務について相談を受けます」と謳うことが必要です。「普通の人がこうして深みにはまります」と多重債務に陥るパターンを紹介したり、「個人破産しなくても、任意整理、特定調停、個人再生などの解決策で、完済するどころかお金が返ってくる場合もある」といった解決のための情報も欲しいところです。

多重債務者を減らすことは、公共の福祉の向上に合致します。すなわち、多重債務は@借金苦による自殺・夜逃げAホームレス・生活保護B公金横領・強盗C離婚・家庭内暴力D税金や公共料金の滞納など、行政自体にもかかわってくることだからです。

行政の答弁は、「県が毎月作成する消費生活情報誌「あいち暮らしっく」を各戸回覧。専門知識が必要なため、無料法律相談や県民生活プラザを紹介する等も含めて出来る限り啓発・アドバイスをしたい。」とのこと。

 

 

議案審議

 

 

[条例案・その他]

@固定資産評価審査委員の選任(長坂時也氏の再任)

A平成18年度老人保健特別会計補正予算の専決処分の承認(17年度未入分1,553万円を18年度予算から繰上充用)

B乳幼児医療費支給条例の一部改正(居住地特例の設定)

C母子家庭等医療費支給条例の一部改正(居住地特例の設定)

D障害者医療費支給条例の一部改正(居住地特例の設定)

E老人医療費の助成に関する条例の一部改正(居住地特例の設定)

F障害者手当支給条例の一部改正(児童福祉法改正に伴う語句の変更)

G町立くすの木授産所条例の一部改正(児童福祉法改正に伴う語句の変更)

H町立なかよし学園条例の一部改正(なかよし学園を森岡保育園に移転)

I非常勤消防団員に係る退職報償金の支給に関する条例(法律施行令改正に伴い、一部を2千円増額)

J下水道工事請負契約の締結(管渠布設,7,003万円,東浦土建)

K平成18年度一般会計補正予算(寄付金で於大公園に監視カメラ設置、庁舎内石綿除去、職員先進事例視察旅費など)

L平成18年度国民健康保険事業特別会計補正予算(制度改正のための電算プログラム改修委託)

M平成18年度老人保健特別会計補正予算(制度改正のための電算プログラム改修委託)

N森岡ポンプ場整備事業用地の買入れの承認(森岡栄北地内5,480uを半田市土地開発公社から7,566万円で購入)

 

B〜Eは、入院・入所等で住所地変更があった場合でも、元々住んでいた自治体が医療費を給付するルールを設けました。このルールは国民健康保険に準じたもので、県下一斉に改正が行われました。従来、東浦は福祉施設が多いため、他の自治体からの入所者に対しても医療費を支払っていました。

Hは、石浜児童館の一角を使っていた児童通園施設なかよし学園がアスベスト除去工事のため森岡保育園に移ったところ、意外に評判が良くて、そのまま正式に移転するための手続きです。

Kの視察旅費は、これからの重要な行政課題をテーマに行政部内でつくる横断的な研究チームのためのものです。視察に行って話を聞いてくるだけでなく、膝詰めで先進自治体の職員と議論して、相手に影響を与えてくるくらいの熱意を期待します。

KLMは、国の制度改正に反対する共産党を除き、賛成多数で可決。他の議案は全会一致で可決しました。

 

 

[請願・意見書案]

@米国産牛肉の輸入に関して、日本と同じBSE対策を求める請願

A憲法を生かして、平和で安心して暮らせる社会を求める意見書

B出資法の上限金利の引き下げ等、「出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律」及び「貸金業の規制等に関する法律」の改正を求める意見書

C医師・看護職員確保対策の充実強化を求める意見書

 

@は3月定例議会から継続審査になっていたものです。消費者の判断に委ねれば良いとの意見もあり、共産党のみの賛成で不採択になりました。

Bは県司法書士会からのサラ金等における上限金利引下げの陳情を受けたものです。

@Aは共産党のみの賛成、Cは共産党と無所属一人のみ賛成で否決。Bは全会一致で可決しました。

 

 

議会改革を

 

知多北部3市1町の合併は破談になりましたが、言うまでもなく引き続き行政改革を進める必要があります。

行政改革といえば、議会改革も然りです。東浦町行政改革集中改革プランのなかでも議会改革の実行を約束しています。議会改革への真剣な取り組みが求められます。

私は、議会の政策提言機能やチェック機能の強化に加え、議会情報の積極的公開に関して具体的な改革案を作るべきだと主張しています。意識改革の掛け声だけでなく、具体策を制度化し実行する必要があります。

私たちの会派では、議員定数の見直し(削減)も考えています。住民の中には、議員の数が多すぎるとの意見が根強くあります。たとえ、削減しないとしても、我々のまちとして何人の議員が必要かをキチンと議論して、住民に説明する責任があると思います。

今年5月に北海道の栗山町議会は「議会基本条例」を制定しました。このような条例はおそらく日本初です。この条例は、理念のみならず、常任委員会・特別委員会を公開する、全議員出席のもと住民に対する議会報告会を少なくとも年1回開く、議員の質問に対して行政側の反問を認めるなど、かなり踏み込んだ内容になっており、先進例として参考になります。

議会では、各会派の代表者からなる「議会の制度・運営に関する検討委員会」を作って月に2〜3回のペースで議論していくことになりました。(さてどうなりますやら。)皆さんもよい方策があれば是非アドバイスを下さい。

 

 

地区実態点検

 

6月下旬に各地区で地区実態点検がありました。年に一度、区長と区の協議員が地域の要望を取りまとめて、町長以下行政の責任者と意見交換します。(御存知でしたか?)あなたの地区ではどのような要望が出たのでしょうか?  東浦町の場合、どこそこの道を直す、ドブを直すといった要望は、区で取りまとめる仕組みになっています。

その分、議員は町全体の仕事に専念することができます。議員の本来の仕事は、議会の場を通じて、行政をチェックすることと住民福祉の向上に資する政策を実現することだと思います。何も議会で発言しなくても行政の担当者と話を付ければ良いというのは、首長の執行権を侵害していることになります。役所に無理な要求を飲ませる「口利き」は議員の仕事ではありません。あなたはどうお考えですか。

 

 

余談・・・ヤギを飼うことに

 

この時期になると毎年草刈が大変です。せっかく太陽エネルギーと空気中の二酸化炭素をいっぱい吸って育った雑草をゴミのように刈り払って(それも労力を使って)燃やして(又は腐らせて)、再び二酸化炭素に戻してしまうのは、本当にもったいないことです。

そこで思いついたのはヤギです。ヤギや羊のような反芻動物は、普通は栄養にならない草の繊維質(セルロース)を分解する微生物を胃の中に飼っていて、繰り返し噛んでいるうちに消化して養分にしてしまいます。ヤギは穀物などを食べないで雑草だけで生きていけます。

そんなことから、ヤギを飼ってみようかと家族に相談したのですが、「植物もろくに世話できないのに動物が飼えるわけが無い。どうせ最後に世話をする羽目になるのは自分たちだ。」と門前払い。

でも、小学生の長女を連れて新城の畜産農家を訪ねたら、子ヤギのあまりの可愛さに2人ともファンになってしまいました。そして家族に無断で、うちにつれて帰ったら、すぐになついて家族みんな虜に。

今では、日中、雑草をモリモリ食べてくれています。ちょっと好き嫌いがあるのがタマにキズですが。

 

 

 

 これはあくまでも私個人の目から見た議会活動報告です。私の考えをできるだけ率直に述べたつもりです。意見・考え方を異にする方も居られるのは当然のことと思います。ご意見、ご批判、ご要望、アドバイス等何なりとお気軽にお寄せください。

 9月定例議会本会議の開催予定は9月6(水),7(木),8(金),11(月),22(金)の5回で、いずれも朝9時30分からです。6・7は一般質問、8〜11は議案の説明・質疑、22は討論・採決です。平成17年度決算が審議されます。決算は、税金が如何に有効に使われたかをチェックし、次の予算に生かすもので、予算と並んで重要です。

 

平成18年6月28日

 

神谷明彦

E-mail kamiya-a@mbk.nifty.com

 

 

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