平成17年3月定例議会報告 (第24号)
3月定例議会が終了しましたので議会報告を致します。本会議は3月3(木),4(金),7(月),9(水),22(火)の5回開かれました。このうち、3・4は一般質問、4〜9は議案の説明・質疑、22は討論・採決でした。
@常設型住民投票条例の制定について考える
町政に関わる基本的かつ重要な案件について住民の自己決定を保障し、また、住民の当事者意識を醸成するためにも、常設型住民投票条例を制定すべきではないでしょうか。
現行の制度下でも、有権者の1/50以上の署名を集め、議会の賛同を得られれば、個別の案件について単発の住民投票条例を制定することは可能です。一方、案件を特定せず、一定の条件を満たせば、議会の賛同を得なくても、いつでも住民投票を実施できるように常設型住民投票条例を制定している自治体もあります。愛知県では高浜市が常設型住民投票条例を制定しています。
総務部長の答弁では、議会軽視との意見も根強いため、時期尚早とのこと。しかし、主権者である住民の意思が最優先されて当然なのではないでしょうか? 今後いかにして政策判断に住民の意向を取り入れていくつもりなのでしょうか? これに対し総務部長は、市民参画条例やパブリックコメント(個々の事業計画について住民の意見を募る)制度などを研究していきたいと答弁しました。
議会軽視と言いますが、間接民主主義は本当に機能しているのでしょうか? 無投票では、住民が選択権を行使しているとは言えません。町長は、これに対する答弁で「無投票の土壌の中で直接民主主義が活性化するとも思えない。住民投票で事がなせると考えるのは短絡的ではないか。むしろ住民意識の問題だ。」と反論しました。
しかし、待っていても土壌は変わりません。少しでも期待があるならば道筋をつけるべきです。現に、前々回の町議選の投票率は65%。身近な選択肢があれば関心は持てるはずです。大事なことは、テーマ設定とそれに対する説明がキチンとなされるかです。高浜市では住民投票の対象となるテーマを、例を挙げてわかりやすく規定しています。何でもかんでも住民投票というわけではありません。例えば、合併の判断は住民に仰ぐべきではないでしょうか。これに対し、町長はテーマ設定と判断に資する説明が大事としながら、住民投票については十分な結論に達していないと明確な答弁を避けました。
A子供の鉛筆の持ち方、箸の持ち方、挨拶の仕方
年明けに行われたカルタ取り大会で、小学生が鉛筆を正しくもてないのを見て愕然としました。鉛筆に限らず箸の持ち方、挨拶の仕方など、子供たちの基本的習慣をどう捉えているか、学校等でどのような指導をしているか質問しました。
小学校は「1年生から字を書くときの姿勢も含めて指導している。箸は給食時に教師が会食しながら指導。“豆つかみゲーム”などの遊びを通して子供たちの意欲を引き出している。挨拶はコミュニケーション能力を育てるのに重要。あいさつ運動などを実施している。地域や家庭との連携も欠かせない。」とのこと。保育園での指導については園によりまちまちのようですが、私は現場や家庭での躾が大切だと思います。
[条例・その他]
@固定資産評価審査委員の選任(久米豊彦氏の後任に長坂吉春氏)
A監査委員に関する条例の一部改正(事務局を設置)
B部制条例の一部改正(4部を6部体制に)
C個人情報保護条例の一部改正(個人情報保護法改正に伴い、漏洩に対する罰則を規定)
D長期継続契約を締結することができる契約を定める条例の制定(地方自治法改正に伴い、リースや継続的な委託について長期契約の締結を可能にするため)
E愛知用水二期事業建設負担金助成基金の設置及び管理に関する条例の廃止(水資源機構に建設負担金を支払うために基金3.7億円を取り崩し)
F行政財産の特別使用に係る使用料条例の一部改正(行政目的で保有する町有地、建物等の使用料の改定)
G公共用物管理条例の一部改正(水路、道路等の使用料の改定)
H文化財保護条例の一部改正(文化財保護法改正に伴い、保護対象に民族技術を追加)
I町営住宅条例の一部改正(町営住宅の建替、一部廃止)
J緒川ポンプ場建設工事委託に伴う変更協定の締結(30億円を22億円に減額,日本下水道事業団)
KJR森岡踏切拡幅及び排水路付替工事に伴う変更協定の締結(1.2億円を1.1億円に減額,JR東海)
Bは、役場の組織改変に関するものです。従来の総務、民生、産業建設、水道の4部を総務、企画財政、民生、環境経済、建設、水道の6部にするものです。これにより部長が2人、課長が2人増えることになります。
Jは、当初30億円を予定していた緒川ポンプ場建設工事費が22億円(別に設計費1.2億円、用地費2.2億円)に確定したための変更です。東海豪雨の後、平成12年度に始まった事業は3月16日に竣工式を迎えました。排水量毎秒5㎥の設備で、緒川地区118haの排水をカバーします。
採決では、Bについて管理職ポストを増やすのみとして共産党が反対したほかは、全会一致で、上記全議案が可決されました。
[予算案]
@平成16年度補正予算(支出の確定による減額など)
A平成17年度一般会計予算
B平成17年度国民健康保険事業特別会計予算
C平成17年度土地取得特別会計予算
D平成17年度老人保健特別会計予算
E平成17年度下水道事業特別会計予算
F平成17年度緒川駅東土地区画整理事業特別会計予算
G平成17年度水道事業会計予算
平成17年度(平成17年4月〜平成18年3月)予算を決定しました。一般会計は122億円、5つの特別会計(国民健康保険事業、土地取得、老人保健、下水道事業、緒川駅東土地区画整理事業)は合わせて88億円、水道事業会計は原則独立採算の企業会計になっていて、収入10億8,900万円と支出12億600万円を見込んでいます。
私は、予算案に賛成しましたが、賛成討論では増え続ける借金を危惧して、次のように発言しました。
多方面からの多岐にわたる要望を予算としてまとめ上げたもので、そのご苦労に対して敬意を表したい。井村町政の長きに渡る1つの成果物であり、この枠組みは、一朝一夕で出来るものではない。施策の内容も、他の自治体と比べて決して見劣りするものではない。よって私は本案に賛成したいと思う。
しかしながら、一つ心配な点を申し添えたい。それは年々、借金が増加傾向にあることだ。一般会計予算額122億円に対して17年度末の見込で借金の総額は一般会計103億円、特別会計と合わせて計208億円に上っている。日本全国を見渡せば、国も借金だらけ、地方も借金だらけだ。「みんなで渡れば怖くない。」とばかりにこぞって借金を重ねる状態が続いている。
その借金を返さなければならないのは、若い世代や、今の子供たち、これから生まれてくる子供たちだ。若年人口が増え続ければそれでも良いかもしれないが、今は少子高齢化社会といわれている。少子化対策が急務だが、すぐに効果が出たとしても、生まれてくる子供が社会に出て納税者となるまで20年以上かかるだろう。したがって、担税力は今後着実に下がっていくことを覚悟しなければならない。これから借金を続けていくと、莫大な借金を数少ないこれらの子供たちに背負わせることになる。
種々の問題を先送りし、数少ない将来世代に押し付けようとする発想は、もはや正当化は困難だ。人間の倫理にも反するとさえ思える。これからは、借金を増やさない財政運営が肝要だ。
賛成理由よりも長くなってしまったが、将来への危惧とそれに対する配慮を申し添えた。そして、予算執行に当たっては、最小コストと最大効果を十分心得た上で執行をお願いしたい。以上で賛成討論とする。
今まで、議員は住民からの要望を役所に取り次いで、「あれもやれ。これもやれ。」と要求していればよかったのかもしれませんが、これからは、取捨選択の判断ができなければならないと思います。
Aは、共産党を除く賛成多数で、他の予算案は全会一致で可決されました。
<電算システムにかかるコスト>
戸籍や、税務やあらゆる情報管理に電算システムが使われています。これらの保守管理費がバカになりません(ざっと拾っても年間1.2億円以上)。電算システムの保守は納入メーカーにしかできない仕組みになっているのが、割高の原因と言われています。時折問題になる1円落札なども、いったん納入すれば、その後のシステムの保守管理や更新で十分お釣が来るからです。
最近、この電算システムのプログラムを開示して、納入メーカー以外でもメンテが可能なシステムを導入する動きが起こっています。佐賀市では、メンテ可能な新システムの構築を韓国企業が落札したそうです。東浦町でも是非参考にして欲しいと思います。
[議員提出議案]
@町議会委員会条例の一部改正(部制条例改正に伴い、委員会の名称と所管を変更)
A町長の専決事項の指定(議決後の請負契約金額の10%かつ1千万円以内の変更について議決を経ず専決可能に)
@では、行政組織の改変にあわせて、議会の常任委員会を「総務」「文教厚生」「経済建設」としました。
一度議決した請負金額を変更するには、もう一度議会の承認を得ねばなりませんが、Aで比較的軽微なものについて町長がスピード決済できるようになります。
@Aとも全会一致で可決されました。
[意見書案]
@社会保障制度の抜本改革を求める意見書
A障害者施策への「1割負担」の導入に反対する意見書
@は共産党以外の賛成多数で可決、Aは共産党のみの賛成少数で否決されました。
知多北部任意合併協議会では、3市1町の投資余力(新たな事業に回せる資金)の比較をすると、合併する場合としない場合で、合併10年後には年間61億円、10年間のトータルで357億円の差が生まれると試算しています。
実は、この差の大部分は合併5年後に事業所税の税収(人口30万人以上の中核市で、床面積1000u超または従業員100人超の事業所に対して課せられる税金で、年間43億円程)を見込んでいることによるものです。残りは、東浦町内の市街化農地の宅地並み課税(年間1億円程)、議員や行政の特別職の減員による報酬減(年間5億円程)、職員人件費の削減(年間5億円程)で、ほとんどが、受動的・制度的な要因によるものです。
合併後の投資余力を、行政の効率化ではなく、新たな税源に求めるのは問題です。本当の意味で合併による行政の効率化を引き出すには、事務の重複や電算システムに要する費用、人件費など個々の要素について削減目標を定めるべきだと思います。
4月6日の合併協議会では、水道料金など各市町で条件の異なるサービスについて最低の負担に合わせるよう訂正があったと聞きましたが、水道料金だけで年間約10億の減収になるそうです。これだけで、特別職のみならず一般職員の人件費削減額が簡単に吹き飛んでしまいます。住民感情に配慮したものと思われますが、持続可能な財政計画になっているのでしょうか。既に合併した自治体の中でも、当初掲げた「サービスは高く、住民負担は小さく」が早くも崩れている所が出てきています。
それから、合併協議会は合併の目的として中核市になることを挙げていますが、一般論としての中核市ではなく、知多北部において中核市になって何がしたいのか、具体的に住民に示すべきだと思います。
皆さんはどうお考えになりますか?
私は、議員になって以来、約6年間、無所属の一人会派を通してきました。しがらみの無いところで言いたいことが言える立場には、捨てがたいものがあります。大事なのは説得力。時間をかけて議会や役所の考えを少しずつ変えていくことは不可能ではありません。しかし、所詮一人で吠えていただけでは、多数決や組織の論理の前に、非力なのも事実です。本会議のスケジュール決定会議である議会運営委員会で正式に発言することも認められていません。
そこで、4月から、無所属議員が3人集まって会派を作ることになりました。メンバーは、森岡の齋吉男議員、石浜の平林由仁議員と私です。会派の名前は「蒼志会」と名づけました。少々青臭いかもしれないけど変革の志に燃えてるぞと言う意味を込めたつもりです。
蒼志会は、政党色を廃し、特定の既成政党に縛られない自由な発想のもとに、政策を議論・研究することを尊重する会派にしたいと思っています。初代の代表は私が務めさせていただくことになりました。
これはあくまでも私個人の考えを率直に述べたものです。意見・考え方を異にする方も居られるのは当然のことと思います。ご意見、ご批判、ご要望、アドバイス等何なりとお気軽にお寄せください。
6月定例議会本会議の開催予定は6月7(火),8(水),17(金)の3回で、いずれも朝9時30分からです。7・8は一般質問、8の後半は議案の説明・質疑、17は討論・採決です。
平成17年4月20日
神谷明彦
E-mail kamiya-a@mbk.nifty.com
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