平成12年12月定例議会報告  (第7号)

 

 明けましておめでとうございます。本年も御指導の程よろしくお願い申し上げます。皆さんは年末年始いかがお過ごしになられたでしょうか。私は、議員になるまでは年末年始はもっぱらスキー場で過ごすことが多かったのですが、このところ、年末夜警、厄歳の行事、元旦祈願祭、商工会の名刺交換会、出初式、成人式などの行事が立て込んでいます。それなりに季節感があって良いのですが、遠出をすることが出来ないのはいささか残念です。

 12月定例議会が終了しましたので議会報告を致します。本会議は12月9(土),11(月),12(火),21(木)と4回開かれました。このうち、9〜12は主に一般質問、12の後半は議案の説明・質疑、21は討論・採決でした。

 

 

 

一般質問

 

 

@コンピュータ教育のあるべき姿は

 1)小中学校のカリキュラムはよく練られているか?

 2)中高年の生涯学習は幅広い参加を募っているか?

 

 パソコンを小学校に各22台、中学校に各42台購入したとか、平成13年度に中学校にLAN(校内ネットワーク)を導入するとか、ハードや予算の話はよく耳にしますが、肝心のそこでどんな教育するのかと言うカリキュラムの話題は出てきません。カリキュラムについては殆どの自治体において手探り状態なのではないでしょうか。

 ここで、コンピュータ教育の是非について考えてみましょう。

小学生にお絵かきソフトやワープロを教えるのはいかがなものでしょうか。絵や文を習っている段階の子供たちにとっては、自分の手を使って書いた方がよほど教育効果があるでしょう。「いや、コンピュータの使い方に慣れるために必要なんです。」と言われるかもしれませんが、情報機器は既に家電の領域に入っています。使い方もどんどん進化しています。ケータイやテレビも、双方向の情報端末としての使われ方が主流になってきます。そんな状況で、学校でわざわざ電子レンジやテレビのように家電やアクセサリーの使い方を教えてどうするのでしょうか。初等教育の基本となる読み書きそろばん(国語・算数)の時間を削ってまでするコンピュータ教育とは一体何なのでしょうか。

 「調べ学習」でも、基本は自分の足で調べて、それをもとに仮説を立て、検証し、発表、ディスカッションとなるのが本来の流れですが、ともすれば、インターネットで検索して、出てきたものをカット&ペーストでペタペタとくっつけて、はいレポート出来上がりということになりかねません。よほどカリキュラムをしっかりしないと、マイナスの教育になってしまいます。予算を組んでコンピュータを導入しても、かつての視聴覚教室やLL教室のように有効に使われないことになります。

 そうならないためには、教員の情報教育技術のレベルアップが不可欠です。コンピュータを使えてなおかつ指導できる教員は、徐々に増えているとは言えまだまだ少数派です。

 私が見聞きした具体的な取り組みの中で、面白いと思ったのは、インターネットを使った国際交流の例です。横浜市の小学校とシカゴ市の小学校がメールのやり取りをするのですが、小学生に英語は分からないので、間に福岡県の高校が入って翻訳をします。日米の小学生同士はコミュニケーションできるし、一方高校生は "This is a pen." のようなつまらない英語ではなく生きた英語を学ぶことが出来ます。

 また、父母、生徒、先生がいっしょになって中学校にLANを敷設する例もありました。作業自体は簡単なので、関係者の合意さえあれば、少しはハードに触れることも出来るわけです。それから、自分の足で得た情報、図書館で得る情報、インターネット上の情報、それぞれの質の違いもきちんと教えて欲しいものです。

 中高年の場合は、ゲームだろうがインターネットであろうが、まずは慣れていただければ良いことなので、カリキュラムを組むのは比較的簡単と思われます。しかしながら、デジタルデバイドという言葉があるように、今後、自治体情報の電子化が進行するにつれて、情報機器を使いこなせる人とそうでない人の間の格差が行政サービスの分野でも生ずる恐れがあります。中高年の生涯教育はこれからどうしていくのでしょうか。もちろん、どこまで民間、どこまで行政で対応するかの議論も必要でしょう。

 教育長の答弁では、「現在、小学校低学年でゲームや図鑑調べ、中学年でお絵かきやワープロ、高学年はインターネットで情報収集、中学校では技術家庭科の中の情報基礎で簡単な仕組みと利用法を学ぶ。」「平成13年度から中学校のパソコンを最新機種に更新しLANで接続する。それに合わせてカリキュラムも新しくしていきたい。」「生涯学習では、平成13年度に文化センターで延べ1700人を対象とした教室を開催予定。中学校で、親子のパソコン教室を開きたい。」「教員のレベルアップに関しては、各種研修会に参加している。」とのこと。

 

 

A防災対策のあり方を問う

 1)山林・農地・宅地における出水源対策は?

 2)ハザードマップの作成方針は?

 

 本議会で制定される第4次総合計画では、河川整備やポンプ場整備などの大掛かりな川下対策が目立ちます。これらは対症療法として致し方ないとしても、出水量自体を緩和する方策はないのでしょうか。例えば、里山のような山林の保護です。山林は保水能力をもっていますが、開発のためにどんどん減っています。

 丘陵部の農地の保水力も利用できないでしょうか。東浦町の水田は662ha(内減反279ha)です。大変大雑把な議論ですが、これらすべてに10cmの深さで水を張ると約66万tの水をためることが出来ます。これは東浦で最大級の飛山池の貯水量の15倍以上です。放置されている休耕田を保水に寄与させれば相当量の水を貯えられるはずです。

 住宅地からの出水も、開発許可の必要な規模のものであれば開発時に対策を求められますが、個人の住宅はノーマークです。個人の住宅も水害の際には被害者になり得るのと同時に原因者でもあるわけです。ちょうど下水道の整備に伴って浄化槽の切替えが発生しているので、これを雨水槽として有効利用するなどの方策も一案だと思います。そして、住宅に雨水槽を設けたり、透水性を確保するなどの対策を講じた場合は、補助あるいは固定資産税等を優遇するなどすれば良いのです。

 これらの方策はいずれも大掛かりな工事は必要なく、ソフト(制度の創設)で対応できるものです。しかしながら行政の答弁は、住宅地に浸透マスを設ける以外は「むずかしい」と消極的でした。

 今回の水害がきっかけで、東浦町もハザードマップを作成することになりました。ハザードマップの作成方針を質問しました。答弁では、「まず水害に関するもの、それも今回の浸水個所を地図上に表示したものを作る。シミュレーションを使った浸水予想図は、予算面・技術面からムリ。」とのことでした。阿武隈川や雄物川などの氾濫があった東北地方では建設省の後押しで各自治体がハザードマップの充実を図っていて、全国でも70近くの自治体(愛知県では豊橋と安城)が何らかの形でハザードマップを作っています。それらの中で秋田県西仙北町のものを参考までに紹介しました。

 本会議では明言を避けましたが、わが国では都市計画が常に後手後手に回って、昔は川の底だったような所にも宅地が形成されてきました。河川改修を行うと確かに水はけは良くなりますが、流域全体の保水力は低下して、一度に大量の水が川を流れ下ることになります。狭い沖積平野に人口が密集している日本の特殊事情もありますが、本来、ポンプで水を汲み出さなければ沈んでしまうような所に人が住んでいるのは問題です。河川改修を更に進め、ポンプを増強するのみでは、本質的な解決にならないのではないでしょうか。これからは、将来展望に立った都市計画を作り、保水のための区域、建築が可能な区域とそうでない区域を今以上に明確化し、場合によっては(一部の農地や氾濫原は)浸水を前提としたまちづくりも考えるべきときではないでしょうか。

 

 

B行政評価制度の導入を求める

 

 近年、行政評価、政策評価、事業評価などの言葉を耳にするようになりました。背景としては、財政悪化や地方分権、説明責任、住民の顧客満足等があるものと思われますが、本来、行政も事業主体なのですから、一般企業並に、やる価値のある事業かどうか事前に収支予測を立てて、事後には成果があったかどうか、継続する価値があるかどうか吟味するのは当然です。ここで「収支」というのは、行政の場合、投入した資源(支出、労力、時間)に対して、どれだけの住民満足(収益事業であれば収入も)が得られたかです。アメリカでは費用対効果分析の実施が法的に義務づけられ、かつその公表義務もあるそうです。

 ではどうやって、評価するのか。種々の手法が開発されていますが、一番手近な方法としてはアンケートによる価値分析があります。しかしながら、住民アンケートは従来、行政のアリバイ作りのために行われ、「こんなサービスはあった方が良いですか?」とか「あったら使いますか?」のような質問が主流でした。これでは「愚問」です。本来ならば、聞き方は工夫するとしても、「このサービスのためにあなたはいくらの使用料を支払いますか?」または「あなたの納めた税金の中から○○円差っ引いても良いですか? その分、他の予算は減りますよ。」と尋ねるべきです。

 コストの見積りについても、民間であれば必ず相見積りは取るし、自分なりに試算して収支予測くらいはします。しかし、役所の場合は、建設コストは入札の関係でやけに熱心に積算するのですが、その他のことにはあまりにも無関心です。

 町長の答弁は、非常に前向きなもので、「平成13年度に担当部署を定めて推進していく。」「行政評価なしには住民への説明責任は果たせない。」「ただし、納税者から見た”投資効率”とサービスを受ける側から見た”満足度”は視点が異なり、何に視点を置いていくかは検討が必要。」とのことでした。

 民間企業では、お役所のように「打ち出の小づち」は持っていないので、会社が傾いてもやるような事業はありえません。本会議に出席する行政側の皆さん(課長以上)はマネージャーなのですから、一人一人が事業家になったつもりで政策の企画・執行をしていただきたいものです。同時に、住民も自分たちの納めた税金の行方(運用成果)にもっと関心を持つべきです。

 

 

C案内標識の充実を

 

 他のまちから東浦に来ようとすると、「東浦」の案内標識が非常に少ないことに気づきます。唯一充実しているのは刈谷市内で、東浦に背を向けない限りは、無事に辿り着くことが出来ます。他のまち(大府、東海、半田、高浜)はほとんどダメ。特に大府市内は極めて不親切で、名古屋方面から東浦に来る人はまかれてしまいそうです。ただでさえ知名度の低い東浦町です。情報発信の観点からも案内標識の充実が望まれます。

 答弁では、「東浦は”市”ではないので、遠隔地での表示は困難。隣接市町については道路管理者の県に対して設置を要望していく。大府市内については県が今年度中に設置していく予定。」とのこと。

 

 

 

議案審議

 

 下記の議案が審議されました。CGJは共産党を除く賛成多数で可決。その他の議案は全会一致で可決されました。

 

[条例・その他]

@個人情報保護条例等の一部改正(語句の変更)

A青少年問題協議会条例の一部改正(語句の変更)

B町営住宅条例の一部改正(町営住宅の一部廃止)

C職員の給与に関する条例の一部改正(期末手当の減額等)

D第4次総合計画基本構想の制定

E町道路線の廃止(石浜芦間地内)

F町道路線の認定(藤江高ツブラ地内)

 

[補正予算]

G平成12年度一般会計補正予算

H平成12年度老人保健特別会計補正予算

I平成12年度下水道事業特別会計補正予算

J平成12年度緒川駅東土地区画整理事業特別会計補正予算

K平成12年度水道事業会計補正予算

 

[追加議案(議員提案)]

L治水対策調査特別委員会の設置

 

[請願及び意見書]

M緒川地区の排水対策の改善を求める請願

Nデポジット制度の早期法制化を求める意見書

O「30人学級の実現」を要望する意見書

P「地震防災対策特別措置法」の改正に関する意見書

Q河川・排水機場等の早期改修についての意見書

 

 Lは、議員提案で、河川改修及び排水機能充実の促進を図るための議論の場として、特別委員会を設置するものです。定員は8人で、各地区選出の議員(水害が大きかった緒川・森岡は各2人、他は各1人)で構成されます。

 

 

 

第4次総合計画

 

 本定例議会において東浦町第4次総合計画基本構想が制定されました。9月定例議会で可決制定される運びになっていたのですが、ちょうど東海豪雨があり、防災に関する記述の見直しを迫られていました。

 第4次総合計画は平成22年を目標年次とした東浦町の10カ年計画で、基本構想・基本計画・実施計画からなります。決してワクワクするような夢のある計画とは言えませんが、政策の継続性を重視して、第3次総合計画と同じく日本福祉大学知多半島研究所に委託して作成されたものです。

 私も含め、全会一致で可決制定されました。私の賛成討論の内容は以下の通りです。

 

 第4次総合計画全体を見渡すと、

@企業会計制度の導入など行財政の適正化・透明化への努力が盛り込まれたこと

A従来のハード依存型の政策からソフト政策へのシフトが感じられること

B里山やため池などの身近な自然環境の保護の発想が若干ながら加わったこと

などが時代の流れを捉えた内容となっており、今後のさらなる進展を期待する。

 様々な要求や制約のある中で、それらを満足させる形で総合計画をまとめ上げたことに敬意を表する。

 一方、この機会にあえて批判も付け加えるならば、

10年も前にバブルがはじけたにもかかわらず、予算は大きいほど良い、人口は多いほど良いといった相も変わらぬ拡大拡張主義、固定資産税頼み・借金頼みの財政運営、表題と地図や地名を取ったらどこのまちの総合計画か分らなくなりそうな東浦らしさの欠如、そして随所に曖昧な表現が目立つ事を問題点として指摘し、今後の改善への努力を要望して賛成討論とする。

 

 

 

町営バス構想の新展開

 

 行政は、今秋を目処に自治体バスを運行したい意向で、名古屋大学の加藤博和先生からいただいたアドバイスを基に企画課がプランを練っています。総合交通体系調査特別委員会では、年末に委員の意見を集約して行政に要望を提出しました。その中には、「地方行政が自分の町の公共交通システムに口を出すのは当然で、知多バスが存続する場合でも行政として注文をつけるべきこと。」「住民の税金を注ぎ込んでバスを運行するのであれば、必ず、事前・事後の事業評価をすること。成功・失敗の基準を明確化し、試行期間内に成功しなければ、撤退を含めて大幅な見直しをすること。」などが盛り込まれています。

 

 

 

 

 これはあくまでも私個人の目から見た議会活動報告です。私の考えをできるだけ率直に述べたつもりです。意見・考え方を異にする方も居られるのは当然のことと思います。ご意見、ご批判、ご要望、アドバイス等何なりとお気軽にお寄せください。人間一人で考えることには、所詮限りがあります。皆さんとの対話を通じて得られたことを政策に反映していきたいと思っています。

 3月定例議会本会議の開催予定は3月7(水),9(金),10(土),12(月),13(火),23(金)の6回で、いずれも朝9時30分からです。7・9・10は一般質問、12・13は議案の説明・質疑、特に3月定例議会では12年度の予算を審議します。23は討論・採決です。あなたの税金の使い道を決定します。

 

平成13年1月20日

 

神谷明彦

E-mail kamiya-a@mbk.nifty.com



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